風紀委員会活動日誌 | ナノ


6/19 渋川千夏

 四時間目の体育の時間に降り始めた雨は、放課後には本格的なものになっていた。窓を覗き込めば、下校する生徒たちがいろんな色の傘を差しているのが見えた。我妻くんは窓ガラスに手のひらをぺたりとつけてその光景を眺めてながら、独り言のようなボリュームでぽつりとつぶやいた。

「……雨だ」
「梅雨だもんね」
「天気予報だと今日晴れって言ってたのに……」
「朝だけね」

 昼過ぎから雨が降るって言ってたじゃんか。昨日の夜の天気予報なら、確かに一日晴れって言ってたけど。そもそも教室の傘立てに刺さりきらないほど傘がある時点で気付いてよ。

「てわけで渋川さん! 頼む! 傘に入れてくださいっ!!」
「え、なに」
「頼むよぉぉ、俺を渋川さんの傘に入れてくれよぉぉ」
「……はぁ、ロッカーにあるから折り畳み傘あるからそれ貸すよ」
「神! 天使!! 渋川様〜っ!!」
「ちょっと、我妻くんうるさい」

 右手を掴まれてぶんぶん縦に振られてしまっては、ロッカーが開けられない。無理やり振りほどいてロッカーのダイヤルを回す。資料集や芸術科目の教科書がこちらに背表紙を見せるように並んでいるのの手前に、数日前置いといた薄赤の折り畳み傘が真ん中に鎮座している。傘だけ出してロッカーの鍵を閉めた。

「はいこれ、明日返してね」
「ありがとう……さすが渋川さん気が利くぜ! ココア奢る!」
「ほんとに? じゃあココア買ったら帰ろっか」

 購買の自販機でココアを買ってもらって、いつも通りの帰路に着く。靴の隙間から入ってきた雨粒で靴下が濡れていった。

「テストまであとひと月もないんだよね。はぁー、梅雨な上に期末とか気が滅入る」
「期末の頃には明けてるでしょ。そういえば我妻くん中間どんな感じだった?」
「炭治郎よりは低いけど、学年の真ん中くらい」
「お、私と同じくらいだ」
「運命じゃない?」
「20人くらい運命の人になるでしょそれ」

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