左右田くんの誕生日




『――ってことで、みんな和一ちゃんの誕生日の準備よろしくっす!』
『分かったわ。プレゼントを各自買うのと、パーティーの準備の役割分担決めね。部費で落とすわけじゃないけれど、買い出しは私がやった方がいいわよね』
『あ、それなら私料理やりますよー』
『了解っす!それじゃあ唯吹は和一ちゃんをパーティー会場までエスコートするっす!あ、和一ちゃんには内緒っすからね!サプライズパーティーっすよ!』
『一番バラしそうなの澪田じゃないのか?』
『うぐっ、創ちゃんの正論のナイフでメッタ刺しっす!』


「……あ、霧切ちゃん。おはよ」
「あら、城咲さん。今日は早いのね」
「早いっていうか……昨日、仕事がすっごく長引いちゃって……。それで料理作ってたんだ。でもまだ全然だから、今日は授業サボりかなあ……。1限確か現文だよね?」
「ええ、確かに現文よ。……いくら休んでも怒られないからって現文ばかり休んでいるとまた先生が胃を壊すから、程々にしなさい」
「あ、あははははは……胃を壊したとか初耳なんだけど私が原因なの?」
「苗木くんに聞いた話だけれど、城咲さんに嫌われてるんじゃないかって凹んでたらしいわ」
「……いや、単に一番まともにできる科目だからサボりやすいだけっていうか」
「そうなの? てっきり役に立たないから、みたいなことかと思っていたのに」
「小説は割と舞台見てると捉えやすくなるし、評論は専門家の方に会う機会もそれなりにあるし。難点は考え込んで時間内に終わらないことくらいかな……」
「ちなみに今日は午後の2コマとも先生が出張で休講って話、誰かに既に聞いていたかしら?」
「え、なにそれ!? 帰ってきてからずっと厨房いたから、霧切ちゃんが初めてだよ」
「澪田先輩に確認を取ってみたら、あちらはクラスの方でも左右田先輩の誕生日祝いをやるみたいでかなり遅くなるらしいわ。時間ならたっぷりあるし、4限のあとにやることにしない? 私も手伝うわ」
「う、うーん……それじゃあ、今日のところは授業出ようかな。あ、その前にご飯食べなきゃ」
「城咲さんあなた、今まで食べてなかったの……!?」
「気がついたらこの時間で……お恥ずかしながら。味見はちまちまやってたんだけど」
「……あなたの分まで適当に食べられるものを作っておくわ。なにか嫌いなものはある?」
「あー、えっと……甘い系は味見しすぎたから今は遠慮したいかな」
「わかったわ。それなら、トースターを使わせてもらおうかしら」


「……で、城咲さん。昨日の夜から作りはじめてたからってどうしてこんなに量が多いのかしら」
「あ、あはははは…………ごめんなさい」
「あの3人がどれだけ食べるかわからないけれど、その前にまずケーキだけで4つってどういうことなの」
「え、えーっと……ひとつは持って帰ってもらおうかなーとか思いまして……でも100%安全とも言えないわけだし、食べるとして翌日以降になるし、……仕方ないか、私が朝ごはんに食べてくしかないのかなぁ」
「……心なしか嬉しそうに見えるのだけれど」
「いやいやそんなことありません、ないないないないってば」
「そう。それは置いておくとしても……これだけの量、どうやって部室まで運ぶつもり?」
「えっと、えー、あーっと……ひ、日向さん呼ぶよ!」
「先輩のことを便利屋扱いするのはやめなさい」
「あ、それじゃあ寮長さんに言って台車を借りるのは?」
「……そういえば、ホールの入り口にはスロープがあったわね。早速話をつけに行きましょう」


「……あら、日向先輩。装飾凄いわね」
「ああ。…って言っても、今朝澪田も手伝ってくれたからな。まあ、もともとあいつはエスコート担当だったしな」
「何かお手伝いすることありますか?」
「いや、あとはこれを貼るだけだから一人で大丈夫だ」
「そう。なら、テーブルの上に料理を並べておきましょう」
「……って城咲、なんだこの量!?」
「つ、つい作りすぎちゃって……」
「つい作りすぎたで済まされる量でもないけどね」
「まあその、あれだ。日持ちしないものから食べて、残ったのは明日の昼にでもまた集まって食べればいいんじゃないか?」
「おー! 後夜祭……いや夜じゃないけど。そんな感じで!」


「霧切、城咲。クラッカーは持ったか?」
「ええ。もうすぐ到着するらしいわ」
「左右田さんが入ってきた瞬間に、でいいんですよね」

「主役は遅れてやってくる! 唯吹参上っす!」
「お疲れ様、唯吹ちゃん」
「いやー、今日の主役は唯吹じゃないんすけどね! はーいそれじゃあ和一ちゃん、入ってきてくださいっす!」
「お、おう……つーかオメーら何して」
「誕生日おめでとう、左右田!」
「ささやかだけれど、パーティーの用意をしたの」
「さっきの今で疲れてるでしょうけど……準備だって皆でやったんですよー!」
「……あっ、ちょっと3人ともずるいっす! 唯吹もクラッカー鳴らしたかった!!」
「ひとつ余ったのなら、ここにあるけど……でも、左右田先輩の様子からしてやめてあげたほうがいいと思うわ」
「え、えっと……そ、左右田さんーっ!?」
「……今ので3年くれー寿命縮んだ気がするぜ」
「それは悪かったわ……」
「ま、まあ気を取り直して、ほら、料理頑張ったんですよ私! 甘いもの食べればちょっとの疲れくらいすぐ取れますから! ね!」
「お、おぅ……うわー、これ全部城咲が作ったのか?」
「いえ、結構霧切ちゃんにも手伝ってもらいました」
「八割方あなたが作ってたじゃない……」


「んでー、それじゃープレゼント贈呈コーナーに移るっすよー!! 唯吹からはー、はいこれ、和一ちゃん用の舞台衣装っす!」
「マジで作ってくれたのか!? ありがとな澪田、今度初舞台のときに着ようぜ」
「もちのろんっすよ、和一ちゃん! それじゃー二番手は未明ちゃん!」
「あー……っと、これ、シフォンケーキです。なまものじゃないから、それなりには保つかなーって……」
「城咲の手作りってことか? うっひょー、めちゃくちゃ美味そうじゃねぇか!!」
「あ、えぇと……ありがとうございます?」
「なんで疑問系なの城咲さん……。左右田先輩、私からはこれを」
「ん、なんだこれ……って目覚まし時計? ちょうど良かったー、この前バラしちまったところでよ」
「……そう。つい最近聞いたばかりだったから、これで間違いはないと思ってね」
「じゃあ最後は俺だな。左右田、改めて誕生日おめでとう」
「日向……オメー、なんつー柄のパンツ履いてんだよ……っ!!」
「えっ創ちゃんのファーストパンツが和一ちゃんの手に!? ちょ和一ちゃん、唯吹も創ちゃんのファーストパンツ狙ってたのにー!!」
「うっせ、うっせ! なんってったってオレと日向はソウルフレンドだからな!」

「…………ねえ日向さん、左右田さんより先に七海さんにあげてたこと、内緒なんですか?」
「さすがに今の左右田に言うことでもないしな。ま、一番にあげたからどうとか、そういうやつじゃないから、しばらくしてから言うことにするよ」


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