11:Day 1


「……よしっ、参加するやつは全員揃ったな」

 名簿のチェックの数を数え終わったようで、円堂が部員の方を向いて拳を宙に突き上げた。

「それじゃあ合宿、やるぞーっ!」
「おーっ!!」

 皆が揃って答えるのを見て、私も少し気合が入る。
 最初の3日は全体を均等にグループ分けして同一のメニューをこなし、4日目はベンチ入り予定のグループとそうでないグループに分かれて練習、最終日には帝国学園との練習試合。出場機会はないだろうと思ってたけど、試合に出すつもりがなければ監督は私にユニフォームを渡したりはしないと思う。……手を抜かず、気を引き締めて試合に臨む。言い換えれば雷門の懐に入り込んで、彼らの思考や想いに触れるまたとない機会だ。
 男子たちが体育館に荷物を置きに行っている間にマネージャーが仕事を始める。男子と違って私は学生寮で寝泊まりするので荷物は置きに行かなくてもいいんだけど、マネージャーの手伝いはしなくていいよとアキに言われているから、とりあえず1人で準備運動をしながら彼らの帰りを待つ。
 普段通りのストレッチを済ませたところでようやく皆が帰ってきて、練習が始まった。


―――


「今日はこれで終わりだ。夕飯当番の人は先にシャワーを浴びて寮に向かうように。それ以外の者は片付けをしろ!」

 イナビカリ修練場から出る頃にはすっかり夕焼け空になっていた。私たちが出てきたのを見て響木監督が号令を出すと、皆が地面に倒れたり一目散にシャワールームへ向かう。部室の壁に立てかけてあったトンボをひとつ手に取ってグラウンドに戻る頃にはグラウンドに寝転ぶ人はいなくなっていた。
 土のグラウンドでやることなんて滅多にないから、こうして練習後にトンボかけをするのは未だに慣れない。慣れた様子でトンボをかける部員を眺めながら、荒れた地面を均していく。素人目には綺麗になったんじゃないか、と思って先導の円堂の方を見ると「トンボもこれでオッケー!」との返事を頂けたので、みんな揃ってトンボを体育倉庫に返しに行く。
 さすがに使用人数が少ない女子のシャワールームの利用許可は下りなかったので、私はそのまま寮へ向かうことになる。ちょうど最後の夕食当番がシャワールームから出てきたところで、やってきたシャドウに声を掛けた。

「お疲れ、シャドウ」
「シオンも、お疲れ様だ」

 今日一日一緒のグループでイナビカリ修練場に挑んだし、なんならクラスも同じだし、他の部員よりちょっと仲がいい、はず。

「ぐっ……まだあの廻る円盤の影響が……」
「よくあれをサッカーの練習って呼べるわよね、本当に……」

 ふらつく彼の肩を支えようにも私はまだ泥だらけのままだし、そうでない部員は早々にシャワーを済ませて寮へ向かっているので、疲れのままに動くシャドウの身体を案じながら歩くしかない。

「必殺技、なにかできそう?」
「……いや、先ずはあの環境に身体を慣らさなければ」
「まあ、逆転の発想って感じよね。サッカーやってる中で掴める必殺技はあそこではできそうにないし……」
「普段と異なる環境に身を置くことで生まれる力……というわけだな」

 ……それは、どうなんだろう。
 考え込み始めてしまったシャドウは私の声に反応しなくなって、すいすいと早足で歩き始めた。必殺技でも思いついたのかな。ならそっとしとこう。


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