9:Invitation


 翌々日は身体測定だった。去年より少し伸びた身長にガッツポーズをしていたらシオンが俺より高い数字を見せてきたり、視力も聴力も去年と変わらず異常なしで、まあこんなもんかといった結果だった。一通り終わってジャージのまま部室に向かうと、鬼道たちのクラスが先に終わらせていたみたいだった。

「シオンを見てこいというのは、一緒にサッカーをしろという意味ではなかったのだが」
「入学式の設営よりはよっぽど有意義な時間だったと思うわよ。それに鬼道の目論見だって外れたわけじゃないんだからいいじゃない」
「まあいいじゃないか、鬼道。こうして今日から一緒に練習できるんだ。……半田、合宿のプリントは出せるか?」
「ああ、今出すからちょっと待っててくれ」

 風丸に言われて出した書類の日付と判子の存在を確認して渡した。シオンが風丸の手の中の紙っぺらを覗き込む。

「合宿……」
「5月の連休に学校でやるんだ。シオンも来るか?」
「そうね、前向きに検討するわ。……保護者のサインのところ、どうすればいいのかしら」

 シオンは風丸から受け取った新しいプリントとカバンから出した手帳を見比べて日程の確認をしてるみたいだ。それにしても、シオンが合宿来てくれたら楽しいだろうなあ。マネージャーみたいにおにぎりを握ってくれたり……って、シオンは選手だから一緒に練習する方か。じゃあ枕投げとか、一緒に夕飯作ったりとか、――そんな風に一緒にやる姿なんて、想像つかないな。

「そういえば昨日、どこまで行ったんだ?」
「……見かけたなら声かけてくれればよかったのに。書類の息抜きにちょっと河口まで走ってきたの」
「10kmは全然ちょっとじゃないぞ」
「あはは……ずっと机に向かってるの疲れちゃって、走ってたら気が付いた時には目の前が海で。風丸は河川敷で練習してたの?」
「いや、昨日は円堂たちと鉄塔広場で――」
「……みんなでやってたなら連絡してくれたらいいじゃない」

 そう言いながらややぶすっとした顔を俺に向けて――そんな顔もかわいいけど――、っていや、そうじゃなくって。連絡先の交換とか、そういえば昨日しなかったな、と思い出した。

「シオン、ケータイ持ってる?」
「え? ええ、日本で使う用のは持ってきてるわ」
「メアド知らなきゃ連絡もできないだろ。次あったらメールするから教えてくれ」
「……考えてみたら、寮に電話を掛けるのも古株さんの迷惑になるものね。ええと、アドレス書くわね」

 シオンが手帳の空きスペースにさらさらとペンを走らせる。ページを1枚切り離したのを受け取る。サインとは違って、わかりやすいブロック体の英語。メールアドレスの末尾が俺と同じでちょっと嬉しい。

「電話番号は後で確認して送るわ。円堂とか、その辺の必要そうな人には教えちゃっていいから。よろしくね」
「ああ!」

 受け取ったメモをポケットにしまった。どうしよう、送るのはあとにするにしても『半田です。これからよろしくな』とかだとさすがにそっけなさ過ぎるような気がする……なんて、風丸に合宿についての質問をするシオンを横目に、メールの文言を考えていた。


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