8:Reconciliation


 久々にやる稲妻KFCとのサッカーはなかなか白熱した試合になっている。まこがシオンのドリブルに食らいつく一方で、竜介のマークが外れている。今日のシオンは自分でシュートを決める素振りがないから、この状況だときっとまこを抜いた後竜介にパスを出すだろう。なら、それを止めてみせる!

「今度こそ止めてみせるんだから!」
「よ、っと。リュースケ! 決めちゃえ!」
「シオン、ナイスパス! おりゃー!」

 まこのチェイスを振り切ったシオンが竜介にパスを出す。読み通りだ!

「決めさせるかっ!」
「うわっ、半田!」

 竜介のシュートをブロックして蒼空へパス。今度は俺達のチームの番だけど、次にゴールが決まったら休憩って言ってから何回繰り返したか覚えてない。シュートは決まってないけど、皆息が上がっている。そろそろ休憩入れた方がいいか。

「みんなー! 10分休憩しよう!」
「おー!」

 号令をかけると、稲妻KFCの面々がグラウンドの外の芝生で休み始める。少し離れたところで休むシオンに声を掛けようか迷っていると、堤防の上に見慣れた影が見えた。ってことは、2人ともメールを見てくれたみたいだ、と胸をなでおろして地面に座ると小学生たちに取り囲まれる。

「なーなー、なんで半田とシオンは付き合ってんだ?」
「だから付き合ってないって。会ったのだって今日が初めてだ」
「その割に名前で呼び合ってんじゃん」
「おまえらだって名前呼びだろ……」
「えっ、そしたら俺もシオンと付き合ってんの!?」
「まず名前で呼び合ってたら付き合ってるっていうのが間違いなんだって」

 小学生たちの追求というにはやや生温い質問を軽くあしらって、シオンたちの話を聞こうとそっちに耳を向ける。うまいこと和解できたみたいで、シオンも壁山に胸ぐらを掴んだことを謝って――ごめんなさいとは言わないけどニュアンス的に多分謝ってる――、こっちの練習に混ざろうとした円堂を、入学式の準備は終わったの、と追い返している。……まあ、うまくいったならよかった。

「シンイチ、ちょっといい?」

 シオンに腕を引っ張られて休憩の輪から抜け出すと、また後ろがざわめきだす。円堂との会話を盗み聞きしてただとか、シオンも嫉妬したんじゃないのかとかなんとか……誤解なのかただの悪ノリなのかの判別がつかない。小学生の頃は俺もああいう話で盛り上がったっけ、というため息をついた。

「円堂たちにここのこと言ったの、シンイチでしょ。余計な気を遣わせてごめんね」
「いくら生徒数多くても、全く姿を見ないってことないだろうしさ。あの後すぐ円堂からメールが来てたから教えただけで、メールがなかったら多分言ってなかった」
「なんにせよありがとう、帰りになにか奢るわ。ええと……駄菓子屋さんでいいかしら? 私、あのお店気になってて」

 駄菓子屋の前を通ったとき、一緒に行こうって言いかけてたっけ。その話はボールに遮られてしまったけど、シオンが行きたいっていうなら案内しよう。

「あそこの店、いろんな駄菓子があるからついいっぱい買っちゃうんだよなー」
「へえ、実物を見るのが楽しみだわ」


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