5:The fairy comes to Japan


 FFIが終わり、日本中のサッカーへの熱が覚めやらぬ冬の日。総一郎に呼ばれて、夏未は理事長室を訪れた。

「パパ、なんの用?」
「夏未に頼みたいことがあってな」

 総一郎は机の上にあったものを手に取って、それを夏未に差し出した。

「イギリスの中学校と姉妹校関係を締結したんだが、そこの理事長のお孫さんが4月から1年間の長期留学で雷門に通うことになる。彼女の雷門中での生活をサポートしてほしい。名前はシオン・グリート――夏未も名前くらい聞いたことがあるだろう」

 夏未は姉妹校の名前が入った白い封筒を受け取った。その手が封筒を開く前に、封筒を両手で抱えて総一郎の方へ向き直る。

「シオン・グリート、ってまさか……」
「そう、そのまさかだ。FFIイギリス代表ナイツオブクィーンの一員、リトル・フェアリーとも呼ばれる彼女だ」


―――


 3月末、シオンが乗ってくる予定の飛行機の到着口から一番先に出てきた少女は夏未の顔を見ると片手で重そうなスーツケースを引っ張りながら小走りで彼女に近づいた。

「ねえ、あなたがナツミ・ライモン?」

 少女が胸に抱える封筒には夏未の見慣れた校章が刻まれている。前もって確認した履歴書に貼りつけられていた写真と、それからナイツオブクィーンの選手紹介に載っていた写真、どちらとも同じ顔。夏未は彼女に手を差し出す。

「ええ。初めまして、雷門夏未よ。あなたがシオンさんよね?」
「ええ、シオン・グリート。ナツミ、1年間よろしくね」

 シオンは夏未の手を握り返す。その手は夏未より大きくて、どちらかと言えば自分より円堂たちと似ている、と思った。

「こちらこそよろしく。早速学校の方に行きましょうか」
「いろいろと手続きも必要なのよね。急ぎましょ」


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