「……あ! お久しぶりです、ゆきさん!」
「え、えっと……どなた? ……あ、え、善逸くん!? どうしたのその髪!?」

 久々に――この前昇級したぶりだから本当に久しぶりだ――会ったら、前は黒かったはずの善逸くんの髪の毛が黄色になっていた。いや本当に。

「ちょっと雷に打たれまして……」
「ちょっとじゃないよそれ!? 平気!?」

 彼の髪に指を通して根本を確認。確かに黄色で、これは染めたわけじゃなさそう。にわかには信じがたいけど……あ、でも蜜璃さんとか桜餅の食べ過ぎで髪の毛桃色になったんだし、あり得ない話じゃないのかも……?

「あ、そういえば鬼殺隊に入ることになったんだよね。鎹烏に聞いたよ。おめでとう!」
「ど、どうもありがとうございます」
「刀は何色だった? ……って、まだ打ってもらってるところか」
「ああ、はい。そろそろ届けに来てくれるんじゃないかってじいちゃんは言ってるけど……」

 そういえばまだ日輪刀の色がどうだ、だなんて言われてもピンとこないのか。戸を閉めたことを確認して、背中にしまっていた日輪刀を鞘から抜いた。

「ほら。わたしのはこんな感じなんだけれど……使い手がその日輪刀を持ったときにはじめて色が変わる、って言うのかな。使い手によって色が違うからいろんな人に聞くのが面白いんだよね。だから善逸くんのが届いたら見せてちょうだいね」
「……! はい!」

 さてさて、どんな色になるんだろう。雷の呼吸なだけあって、私と同じように稲妻が走ったような模様が出てきたり? そうしたら、お揃いみたいで嬉しいな。

「ところで、ゆきさんは今日はどうしてここに?」
「あ、言ってなかったね。今度鬼殺隊の柱に昇任することになったから、その報告に」
「柱……ってあの一番強い人たちに!?」
「いやー、まだまだ末席だし。年下の子なのに私より早く柱に昇任した人もいて、負けてられないなってさ」

 思い浮かべるのは、蟲柱の胡蝶しのぶ。自分よりも年下で、それに加えて独自の流派を作り、鬼の頸を切らずとも殺せる毒を開発した――なんというか、自分よりも凄い人。だけども、自分は彼女とは違う流派の人間だし比べようとしなくてもいっか。

「……いつか、善逸くんと共同で任務する日も来るのかな」
 日輪刀をそっと背中に隠して、軒下にぶら下げられた季節外れの風鈴に目をやる。
「そ、そのときは俺がゆきさんを守りますよ!」
「ふふ、ありがとうね」

 自信満々に胸の前で握られた拳が震えているのは見ないふり。彼に助けられるだなんてことはないだろうし、きっとあっても逆だろう。ああでも、それでも。こうして言ってもらえるのは久しぶりで、嬉しいや。


戻る






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -