03
波の音と鳥の鳴き声、それから自分がたてる水音。
島の探索、あたしも行くべきなんだろうか。でもホテルとかの重要そうな拠点の情報は頭に入ってるし、カケラも全員のを手に入れている。特にそれ以上にやりたいこともできることもないし、再集合までここでぼーっとしてよう。
波が押し寄せてきて、あたしの足跡をかき消した。ふくらはぎの真ん中くらいの深さになるところまで海の中を歩いた。水の中に生き物の気配はない。……当たり前か。
辺りに人はいない。ゆっくり考え事ができそうだ。
今ここにいる十神白夜は超高校級の詐欺師であり、日向創にはカムクライズルの片鱗も見当たらない。予想していた不幸より遥かにましなものだから、ここから何か斜め上の事態が起きる気がする。というか起きないはずがない。今突然津波が起きて海の向こうにさらわれるとか、食べ物を唐だが受け付けなくて食べられないとか、そういうあたし一人だけ被害を受けるようなことならいいんだけど。
「……そんなわけないわね」
立場とか役割とか、そんなことを考えるとその程度で収まる不運なはずがない。突然この中の誰かが殺人衝動に駆られて他人を全員殺してしまいそうになるとか、あたし以外の誰かが死にかけるとか、そのくらいが妥当だろう。常に最悪を想定して動かないと。
――それと、もうひとつ。今のあたしについて、だ。
身長体重胸囲、どれも入学時に計測した数値と変わらない。それは西園寺を見ても明らかで、ならあたしの身体能力の限界はどこにあるんだろう。体力筋力柔軟性、その他諸々。
冷静に考えれば、身体能力は入学時まで戻っているだろう。ただ理論と動きは頭が覚えているから、弐大にトレーニングをつけてもらえば以前ほどとは言わずとも恐らく程々に戦えるようにはなるはず。ならないといけない。まずは良好な関係を築くところから?
……ひとまずはこんなところかな。これから起こりそうな危機は頭の片隅に置いて、目の前の事象を監視していかないと。