02

「……はー」
 島の探索を、とみんながバラけて、ようやく一人になれた。だからと言ってどこにも行く気になれずに、砂浜に座って肩をぐりぐりと回しているだけなんだけど。
「……ねえ、火灯さんはこの島を見て回ったりしないの?」
 はぁ、と溜め息をひとつ。面倒なのに絡まれた。不運ポイント加算しとこ。
「あ? ……あぁ狛枝か。ちょっと考え事したいのよ。みんなには悪いけど」
「それってもしかして……火灯さんの才能についてかな?」
「まあだいたいそんなところよ。……ってか狛枝、あんたこそなんでここにいるのよ」
「ほら、ボクは彼の様子を見てようと思ってね。それにボクなんかが探索に行ったところで、他の超高校級のみんなの足手まといにしかならないだろうしさ」
「……それならあっちいってなさいよ。あたしのことはほっといて」
「ああ、ごめんね火灯さん」
 狛枝が日向のもとに戻って声をかける様子を見て、するすると靴下を脱いでローファーの中に丸めて入れる。靴を持ったまま波打ち際へ移動してぱちゃりと水面に足をつけると、冷たくて気持ちがいい。そうしながら、スカートのポケットから電子生徒手帳を取り出して校則を眺めることにした。
「……はあ」
 ……なんか子供扱いされてるみたいで腹立つ文面。一応希望ヶ峰の新入生ってことになってる彼らも、恐らくあたしと似たような感想を抱くのであろうけれども。
 他の項目を見つつ、そのまましばらく足をバタバタさせて、その音を楽しむことにしようと――
「ねえ、火灯さん」
「だからほっといてって言ったばっかりじゃない……何よあんたは鳥頭なわけ?」
「いや、そうじゃなくってさ。彼が気がついたみたいだから、自己紹介してもらえないかなって」
 振り返って見れば、狛枝の横には日向が立っている。
「そう、ならよかった。あたしは火灯ころね。よろしく。あんたは?」
「日向、創だ。よろしくな」
 形だけの握手を交わして、また海へと向き直る。今のあたしにも彼にも、紹介すべき才能なんてないのだから。




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