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(左右田くん視点)

「……こりゃ研究教室で寝ちまった方がよかったかもしんねーなァ……」
 いくら新作のメカにつけたい新機能があるからって、徹夜で作るのはやり過ぎだった。夏休みだからって一睡もせずに作業するのはキツいか。……いや、でもここまで来たからにはさっさと寄宿舎に行ってベッドで寝てェ。床は御免だ。
「……ん?」
 見覚えのない大人が3人、誰もいない道を通っていく姿が目に入った。こんな時期には事務だってほぼ動いてないのに、一体何の用だ?
 ……いや、オレには関係ねーか。一瞬止めた足をまた寄宿舎に向けて動かす。
「あ、あの、そこの!」
 背中越しに声が聞こえて、つい振り返った。そこの人だなんてどう考えてもオレしかいねーし。
「ああ、やっと人がいた……!」
「……この時期先生もほとんど帰省だとかでいないんですけど、誰か探してるんですか?」
 ぱっと見ただけじゃ、クールビズの男性2人と比較的かっちりした格好の女性の3人組でしかない。一体誰が目当てなんだと思考を巡らしていると、その中の1人が名刺を差し出してきた。
「超高校級のメカニック、左右田和一さん……でお間違いないでしょうか。私はこういう者なのですが」
「まァ、間違ってはないっすけど……」
 受け取った名刺を確認する。テレビ局務め、ってことは舞園さんあたりか?
「んで、誰に用があるんですか?」
 一応形式的に目は合わせながら、名刺をしまうでもなく手の上で弄ぶ。うわ、なんかそれなりにいい紙使ってるんだな。触り心地がいい。
「城咲未明さんは今学園にいらっしゃいますか?」
「城咲? なんか用があるなら学園にアポイントメント取らないと捕まらないんじゃねっすか」
「とにかく、城咲さんの居場所について知ってる事があれば教えていただけると――」
「いや、待て。学年が違うから面識ないかもしれない」
「あれ、そうでしたっけ?」
 ……なんか2人して話し始めてっけど、後ろでは唯一の女性が腕を組んでイライラを顔に出している。多分名刺をくれた人がそうじゃない男の人の部下だとは思うけど、この人は何なんだ?
「あのー、それで、3人ともこのテレビ局の方なんですか?」
「……母です、城咲未明の」
 なるほど、この人だけ部外者なんだな。そしたら尚のこと母親とテレビ局の人が一緒になって城咲を探している理由が気になるし……それに確かアイツは昨日、実家に帰りたくないとか言ってたし、そんなに親子仲は良くなさそうだな。
「……まあ、とりあえず、どこにいるかとか分かったら連絡ください」
「はあ……」
 それじゃあ、と告げて校門の外へ消えていく三人を見て、今度こそ帰って寝るか、と寮へ足を向けた。




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