ルカ

※男主

「何をしているんですか、あなたは」
「…ルカちゃん」


ここが島の中である以上ファミリーの誰かに会うとは思っていたけど、ルカちゃんは一番――…ではなくとも、あまり考えていない相手だった。だって怒りそうじゃないか、こんな時間に誰にも告げずに出掛けたら。いや、正確にはデビトには言った。幸いまだカジノにいるだろうあいつに「相談があるから聞いてくれ」と縋ったのが今日の昼、デビトは嫌そうだったけど知らん。俺は今すぐにでも答えを出したかったんだ。

話は思いっ切りそれた気がするが、とにかく俺は、夜間の外出には口煩そうなルカちゃんがこの場にいることに驚いたのである(その外出ってのは、俺の捜索なんだが)。


「館を捜し回っても見当たらないから心配していたんですよ。ちゃんと誰かに一声…まあ、あなたも子供ではないですが」
「…ルカちゃんってさ」
「はい?何です?」
「んーん、いい」


ルカちゃんの眉がぴくりと動く。俺が何かを隠してるように見えるから不安なんだろうきっと。ルカちゃん自身隠し事が多いくせに人にはぐらかされると根掘り葉掘りするんだよなあ。女々しいというか悪い癖というか。何より、それがお嬢様にも「落ち着きがない」って呆れられる原因だってわかってるかね、ルカちゃん。


「なまえ、一人でどこへ行くつもりだったんですか?」
「どこってこともないけど…あ、お嬢様寝た?」
「あなたが戻るまでは起きていると聞かないんです。捜索は思い止まっていただきましたが、なまえ。お嬢様にもしものことがあったらどう責任を取るつもりなんですか!?」
「え、…そうだな。デュエロで婿が決まる前に、」
「ふざけているんですかっ!?」


オニ、確かジャッポネにはそんな生物がいるとマンマが言っていた。今のルカちゃんの表情はそのオニだろう、間違いない(でもオニがルカちゃんみたいならあんまり怖くないか)。


「俺が戻るまでは起きてるって、俺ってばお嬢様に想われてるじゃない」
「…なまえ」
「冗談っ!ルカちゃんって何、お嬢様の保護者?兄貴?恋人?」
「こ、いっ――!?」
「うわー…過剰反応」


ルカちゃんはお嬢様のことが大好きだ。そんなのは日常生活で十二分に証明されている。

問題は、お嬢様で。


「なっ、何だっていいでしょう!?とにかく!もう遅いんです、戻りますよ!」
「はーい。…ルカちゃんさあ」
「…今度はちゃんと、話してくれるんですか?」
「んー」


今日の昼、俺がデビトに会いに行く前。何かを求めるように歩き回っていたお嬢様は俺を見つけると駆け寄ってきた。それはいいのだ、別に。

お嬢様は今日も可愛い。そんなことを考えていると、お嬢様は端的に「ルカ見てない?」と発したのである。たったそれだけ、表情は至って真剣。大切な用でもあるのかと思ったが尋ねたところ「ただ捜してた」という返答。どこか恥ずかしそうに見えたのが新鮮且つモヤモヤを生んだ。


「俺は俺の気持ちについて聞きたかったんだ、プロフェッショナルに」
「はあ?…絶対に関係ないですよね、私を呼んだのと」
「あるようなないような?」
「いいです、もう」


お嬢様が俺を心配している事実と、ルカちゃんがわざわざ捜しに来てくれた事実。その裏側にはお嬢様の想いがあって、まあでもきっとルカちゃんの想いもあって。

俺は何に喜んで、何にモヤモヤしているのだろう。



end.

20120907

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