石垣と御堂筋

「光太郎、おる〜?」
「光太郎なんぞおらんよ」
「……あ。石垣くん、三年の石垣くんおる?」
「石垣くぅん?キミィ、何しに来てん」


部室を訪ねると人間とは思えないけどまあ人間、ギリギリ人間と思しき男子生徒の姿。一度たりとも見た覚えがないいうことは、一年生やろか。


「石垣くんにな、お菓子渡しに来てん。作ったから食べてもらお思て。一年生くんも食べる?」
「何や一年生くんて。御堂筋翔くんや。…いらん」
「翔くんいらんの?まああれやね、私もそんな作っとらんし。いらんねやったらしゃあないな」
「じゃあ聞くなや。……翔くん言うな」
「だって翔くんやろ?」
「………ちゃう」
「はーっ、何やややこしい一年生くんや。石垣くん外か、したら外」
「そろそろ戻るで。待っとき」
「そうなん?ありがとうね、翔くん」
「話…」
「おお、どないしてん。何やオレに用か?」
「ホンマに光太郎!すごいっ、助かったわ翔くん!」
「翔くん?」
「………」


ああ、御堂筋か。光太郎が呟くと翔くんは何や嫌そうな顔をする。ギョロっと大きな目は昆虫とか蛙とかそんなんを思い出させるなあ。それにしても歯キレイやね、翔くん。


「ほんで光太郎!何ちゃうわ!メールしたやろ、美味しいお菓子持ってくでーって」
「ホンマか?携帯見とらんかった」
「わっ、聞いた翔くん!人のメール見てへんて!酷い先輩や思わんっ!?」
「知らん。騒ぐなら出てきぃや、耳に刺さる」
「みど、…まあおまえもおまえやで。菓子な、練習終わったら食うわ」
「…わかった。ここ置いとくから。ちゃんとメール見ろし!翔くんも食べてええからね!じゃっ!」
「見るから騒ぐなや…嵐やな、あいつ。そういうわけや、御堂筋。遠慮は――……いらんか、おまえは」
「………食うてもええよ」
「え?」



夜、随分焦ったような声の光太郎が「食うたで!」なんて電話寄越して。何時も通りや思たけど、気にしてくれたんやろか。



end.

20140319

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -