お前の初恋の相手って俺だろ?

ごふ、と咳込んだ瞬間に口の中のものが飛び出す。
途端に酷く顔を歪ませた仙石くんは今にも笑いそうではないか。失礼、失礼にも程があるんじゃないかな。


「拭けよ」
「…ありがとう」
「しっかし、くっ…何、動揺しすぎだろ」
「仙石くんが変なこと言うからでしょ」
「まだついてるぞ」
「………」


何やら私の記憶にある仙石くんとはまた印象が違う、ような。更に体が大きくなった気がする。あと、ますます悪人面に。


「昼飯どうだーって、急に何だと思ったら。…趣味悪すぎ」
「奢ってやってんだからいいだろ?しかも何年も前の話、純情ぶって隠すほどのことかぁ?」
「……指差して大爆笑しそうな人だからね」
「そんなことするはず!…あー、喉渇いた。お前は何かいるか?」
「いらないっ!」
「いらないっ!ぶふっ、顔真っ赤…!」


そうやって笑うのは失礼だと思うんだけど。何、何なの仙石くん。というか私は何でこんな人に好意を持っていたんだろうか。いいとこなんて見つからないよ、確かに背は高くて姿勢もいいし、強面とはいえ顔立ちも整ってるけど。あれか、外見にきゃーきゃー言ってたとか。それともあれか、友達の話を聞いてるうちに。


「ぼーっと見て、どうした?…まさか再会して改めてときめきが…!」
「ない。ないない、ぜーったいにない!」
「そりゃわからんぞ。否定するのが怪しい」
「仙石くんは何、私が仙石くんに惚れてるってことにしたいの?」
「惚れてるだろ」
「〜っ、昔の話っ!」


折角評判のパスタなのにちっとも美味しくない。いや、正確には美味しいものが台無しになった。それもこれもデリカシーの欠如しまくった仙石くんの所為で。


「誘ったらほいほい来たのになぁ」
「懐かしくなったからでしょ」
「ん〜?」
「何なのさっきから!」
「いやだってな。お前にとって俺って」


初恋だろう。
放たれた言葉に、心臓が飛び跳ねた。



end.

20131202

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