そういうとこ全然変わってないな

「………」
「久しぶりだな、シニョリーナ」
「…シーザー?」
「ああ、シーザーだ」


ぱちぱちと、不思議そうに瞬くそれは少女を思い起こさせる。とは言え彼女に限らずおれの中での人々の記憶というのはあの頃で止まってしまっているから、彼女は紛れも無く少女で。

例えばJOJOの奴に孫が産まれただとか、彼女が良縁に恵まれただとか。それから浮気をしくさったとか旦那さんはとても彼女を大事にいていたとか。そういった情報はあるにせよ、やはり体感しないとどうにも実感はないのだ。この身体に実感、というのも妙な話だが。


「シーザー…ああそう、そうね。シーザーってこんな顔で、こんな声だったわ。まあまあ、随分と美形だったのねえシーザー」
「思い出してもらえて光栄だな、シニョリーナ。君の声も変わらず耳に心地好い」
「そう、シーザーってこういう人で。今更じゃないの。もっと前に思い出していたら貴方のことを話せたのに」
「せがまれていたのかい?」
「大切な人の大好きな花よって子供や孫に教えてやってねえ。その度に誰って聞かれていたのだけれど、向日葵が好きなのよとしか言えなかったの。悔しくてね、私」
「何時までも縛られているよりはいいさ。シニョリーナが前に進んでいる証だろう?」
「…意外。縛られている方が好きなのかと」
「そこから動けないんじゃあ意味がない。…JOJOと話すのは、まだ少し先になりそうだが」
「そうねえ。ああ、そうよ、ジョセフと言えばね。少し前に――…もう何年も前だけど。お孫さんを連れて来てくれて。お孫さんもすごく大きくてね、それは私も歳を取るわけだわ」
「シニョリーナは何も変わらず可愛らしいままだと思うな」


その子供も孫も彼女のように朗らかで、よく笑う。
何もそれはシニョリーナの影響だけじゃなく、穏やかな旦那さんの力もあるわけだが。


「旦那さんはおれのことを知っているのかい?」
「ええ。私が結婚してちょっと、ジョセフとスージーQが来てね。あと向日葵の種を置いて行ったから、そのときに」
「是非ともお会いしたいな。シニョリーナを昔と変わらず、それどころか更にその魅力を伸ばす男だ。礼を言わないと」
「どうしてシーザーが言うのかしら」
「君の大切な友人だからさ」


困ったように笑う顔も、相変わらずだ。



end.

20131114

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