郭嘉と夏バテ

「何ですか」
「避難かな」
「何の」
「私が今まで過ごした中でここが一番涼しいんだ」
「…陳羣様がいらっしゃいますよ」
「今日は来ないよ。処理するものが沢山あるから」
「それは……そんなにお辛いですか」
「それなりに、は」


椅子に凭れた郭嘉殿は猫のように目を細め、小さく唸る。確かにこのところの暑さは厳しい。ただでさえ健康的な生活を送っていない郭嘉殿だ、人以上に応えるのは明白だろう。


「ここもそれなりに日は入りますよ」
「うん、そうだけど。歓迎されないし」
「…それは、居心地は悪くなれ涼しくは」
「心の問題だよ」
「はあ」


一段落ついて、溜息。
信念として掲げているのか郭嘉殿は「暑い」と口にされない。まあ態度でまるわかりではあるけれど。陳羣様をはじめとした方々の苦言には耳を貸さずどこ吹く風だというのに、日には弱いらしい。かといって寒さに強いわけでもないらしく、一時期は寒くて死にそうだと口癖のように吐き出していた。


「…疑問なのですが」
「ん?」
「ここは何処よりも暖かいから、と以前おっしゃっていませんでした?」
「そう?」
「その時も確か、陳羣様は席を外されていました」
「よく覚えているね、偉い偉い」
「……郭嘉殿のおっしゃる美しい女性に手酷く扱われれば寒くもなるのでは?」
「残念ながら、そんな機会は巡って来なくてね」


また、溜息。そして目を閉じる。
感じ方はそれぞれで、私では郭嘉殿のお気持ちを理解することは出来ない。私はどうにも外気の変化に強いらしいから。


「………。そうして隅にいらっしゃるなら、構いませんが」
「…いても?」
「何をするわけでもないですし」


下がる眉、まあ何とも情けなく柔らかな顔だろう。



end.

20130730

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