ちいさな自覚

「向日葵ですか?」
「そう。途中で見掛けて」
「シーザーちゃんってば暫く動かないから、あやうく遅刻するかと思ったぜ」


シーザーさんはくすりと笑う。そこに「敬語でなくてもいい」と加えられ、心臓を掴まれるような、つまり一瞬呼吸が苦しくなった。

少し遅めの昼ご飯。私が学食に行くとジョセフさんがいて、招かれるまま話していたらシーザーさんもやってきた。そしてこれである。聞けば二人は下宿をしているようで、リサリサ先生というお師匠様がいるのだとか。シーザーさんはそのリサリサ先生を心から尊敬しているらしい。話す横で苦笑を浮かべたジョセフさんは、「まあ尊敬はしてる、多分」なんて曖昧な答えだったけど。


「うーん…その駅だと確か近くに、向日葵畑があった気がします。小さいの」
「知らなかったな。こっちに来てそこそこは経つんだが」
「まーあそこで降りたのはじめてだったし?」
「…お前が寝ていたのが原因だな、JOJO」
「シーザーだって直前に起きたんと違う?何時も叩き起こすだろ」
「その人に頼り切った根性をどうにかしろスカタン!常に一緒に行動はしていないだろうが」
「使えるものは使うのが信条なのよねん」


舌打ち。ジョセフさんは非常に甘えるのが上手い、らしい。二人をよく知らない私なものだから、果たしてジョセフさんが甘え上手なのかシーザーさんが世話焼きなのかはわからないけど。どっちもなのかな。何と言うか、兄弟みたいなんだよね。


「――まあ、それはいい。よくはないが。それでだなまえ、君は行ったことがあるのかい?」
「小さいときに一度だけ。降りる駅を大分過ぎるので、何か足が向かなくて」
「…そうか」


そのまま口を閉ざして思案する。最中、ジョセフさんは実に詰まらなそうにレタスを刺して頬杖をついていた。レタスの無残な姿がいたたまれない。


「なら、案内をお願いしたいな。しっかりと見てみたいんだが、如何せん土地勘がない」
「私もそう詳しくは、」
「おれやJOJOよりはいいだろう。決まりだな」
「…ママミーヤ」


呟くジョセフさんを睨むシーザーさん。また掴まれた心臓は、拒絶の言葉を紡がせてはくれない、らしい。



20131022

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