待てども得られず

馬鹿だろう、誰って私が。そもそも講義が全被りなんて有り得ないわけで、あの日たまたま時間が重なっただけなんだ。会わないのが普通、あんなに広い大学、しかも何科かもわからないときた。ちょっと浮かれて本当に馬鹿だろう、私。


(…聞くのも変だし)


何時の電車に乗ってるの、どれ取ってるの。駄目だ、怪し過ぎる。あからさま。そもそも彼とどうこうなりたいわけじゃなくて、いや、だったらどうして捜してるんだって話なんだけど。まだその段階じゃ、ならどの段階なんだって。ああもう、馬鹿。


「なまえ!」


肩が跳ねる。声にじゃなくて、顔を上げたらいた人物に。私の前に立っている人、ツェペリさん。というかいきなり名前か。ちょっとびっくりした。ちょっとじゃない、かなり。


「…こんにちは」
「こんにちは。また会えたね」
「はい。…お友達」
「あら、結局知り合いになっちゃったわけ、シーザーちゃん」
「ま、そんなとこだ。次に講義が?」
「ツェペリさんも?」
「いや、おれは片付けちまいたいレポートがあっただけで…講義はこっち」
「ああ…」
「オレ?オレはジョ――」
「ジョースター」
「え?」
「おまっ!ジョセフ!ジョセフ・ジョースター!」
「ジョースターな。それからだ、なまえ」
「あ、はい」


ジョースターさん、何か言いたそうだけど。てことは、ジョースターさんは講義があるのかな。ツェペリさんは付き合ってだろうか。レポートとは言ってた、けど。


「シーザーでいい」
「えっ?」
「ツェペリって名には誇りを持っているんだが、是非ともシーザーでお願いしたいんだ」
「ならオレもジョセフでいいじゃねぇの」
「煩いぞスカタン」
「何でだよ!!」
「か、考えておきます」
「ん」


ツェペリさんではなくシーザーさん。それからジョセフさん。偶然、今日会えたのは偶然で、見かけたところで私から声を掛けるなんてするだろうか。やるなら今、振り絞るなら今、だ。


「アドレス!」
「が?」
「教えていただけたりなんかしないかな、…なん、て…」
「……ママミーヤ」


丸くなったツェペリさんの瞳。命短し行動は積極的に。動いてみたら、何かが変わるかもしれないじゃない。



20131019

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