告白

あれは一体何だったのか。
多くの人間を操り一時は世界の危機まで感じさせたJFXは思いの外小さく、大規模な災害を起こした宇宙人とは到底思えなかった。ハルやココと同じく人間へと変じることが出来るJFX。その姿も貧相というか、もっとこう、逞しいものかと。


「夏樹くん、アメリカ行くんだってね」
「そうらしいね」
「真田くんはここに残る」
「ハルはJFXを連れて、星に帰る」
「JFX?」
「ハルの仲間で、そいつを調査するために派遣されたのが俺なんだ」
「DUCK…だっけ」
「うん」
「……アキラくんは、」
「ここでの任務は終わったから、また別の地域に派遣されるだけだよ」


なまえちゃんに抱えられたタピオカが気遣うように鳴く。言葉は伝わらなくても気持ちは伝わったのか、なまえちゃんは小さな声で「ありがとう」と言うと抱きしめる力を強めた。

JFXを釣り上げて陸に戻り、無事を報告した後に顔を合わせたなまえちゃん。俺がDUCKの一員であり、無理にでも高校生として過ごす必要があったことを話すとやはり呆然としていた。「話してくれて嬉しかった」という台詞ともに見せられた笑顔は可愛いが複雑で。なまえちゃんと離れることになるという現実と、もっと早くに話しておけばよかったという後悔、二つが見事に混ざり合う。


「江ノ島には、戻ってこないの?」
「時間があれば来ようとは思ってる」
「そっか。…あ!次の派遣先でも高校生やるつもり?」
「もうそれは…多分、ないと思うけど」
「…手紙」
「手紙?」


なまえちゃんは俺との別れを惜しんでくれているのか。手紙を書くとかそういう、そういえば、なまえちゃんのアドレスを知らない。


「さくらちゃんがね、タピオカにもらったって」
「タピオカ…?」
「あれ、何て書こうとしたの?」
「手紙…え?」


記憶にない、そう告げようとして言葉が喉に張り付いた。記憶にないなんてとんだ法螺吹きだ。寧ろありすぎるくらい、なまえちゃんに渡せないかと一瞬だけ考えて、結局止めたそれしかない。タピオカのやつ何で。なまえちゃんに抱かれているアヒルを睨むと惚けた表情で首を傾げているじゃないか。

時々とんでもなく腹が立つ、このアヒルは。感謝だって勿論してるんだが、まあ、今とか。


「あれは――…」
「私ね」
「えっ?うん」
「…アキラくんが好き」
「……………は?」
「は?って。何かもう、そんな反応されると緊張もなくなるよ!だからね、好きです。会えたら言いたかったの、避難所でずっと考えてた」
「好き、」
「それで!アキラくんは何て書こうとしたの?」
「いや、…まあ」


どう伝えようかと思案しているとタピオカと目が合う。わかってる、相手に、しかも年下の異性に躊躇いなく言われて恥じらってるわけじゃない。馬鹿にするなよ、タピオカめ。


「書きたいことはあったんだけど、上手く文章にならなくて。考えてみれば直接伝えた方がいいのかなとか思ったり――…つまり」
「つまり、」
「なまえちゃんと同じ。俺はなまえちゃんが好きだよ」
「…本当に?」
「だからこれで終わりにはしたくない。こっちに来たら会って話したり。来ないときも、出来れば。…連絡、してもいいかな?」


照れてないし赤くもなってない。俺は高校生じゃないんだ、意中への告白くらいスマートに出来て当然だろう。まったく、今日のタピオカはやたらと疑うな。


「うんっ!」


より一層、華やぐ笑顔。
ああ、この子との道は、これからも続いていく。



fin.

20120710

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