吐露

「夏樹くん?」


避難をするまではあっという間で、避難所に辿り着くと既に沢山の人がいた。壁に貼られた指名手配書を見詰める後ろ姿は夏樹くん、髪が短くなってるけど間違いない。


「…なまえ」
「髪切ったの?」
「いやまあ、切られたってか」
「切られた?」
「ああ」
「……」
「……」


会話が途切れ、二人して壁を見る。水鉄砲を構えて厳しい顔をしているハルくん。見慣れているのは笑顔のハルくんだから、何だか不思議な気分だ。


「…ハルくんだね」
「…そうだな」
「宇宙人とは言ってたけど、本当だったんだ」
「宇宙人、か。…どこにいるんだよ」
「ハルくん?」
「ハルもだけど、ユキとアキラも」


もう江ノ島には入れない状態で、この数なら殆ど避難を済ませているんだろう。ニュースの通りハルくんは江ノ島に、アキラくんもハルくんを捜しているからここにはいない。見る限り真田くんの姿は避難所にはなく、ケイトさんもいないようだ。真田くんもまだ、江ノ島に。


「真田くん、ハルくんを捜してるのかも」
「…俺だって」
「でも、一般人は避難しろって話だし」
「ならユキは」
「次のバスで来るとか」
「ハルが危険って、」


夏樹くんは私よりもずっと長い時間をハルくんと過ごしていた。だからきっと、私は知らないハルくんを沢山見ている。手配書に向けられている視線は睨んでいるようにも見えるくらいだ。整理が出来ていない私とは違って、腹が立つやら悔しいやらの感情が渦巻いているんだろう。アキラくんも、そう考えているのかな。


「……私ね」


素直に感情を吐き出す夏樹くんに触発されたのか、私はアキラくんを思い浮かべながら自然と口を開いていた。


「信じてるみることにしたんだ、大丈夫って」
「何だよ、急に」
「怖がるのはなるべく止めようって思ったの」


必ずまた会うって、アキラくんと約束したから。



20120707

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