特訓

歩ちゃんの勘違いには突っ込みたいけど、山田くんと話せるかもしれないという事実は私を揺さぶる。学校で声を掛けようにも盛り上がらないし、近づいてきた夏休みをチャンスだと思っているのも間違いない、のだが。


「無理だな、こりゃ」


波止場に寝転んでいるのは何も眠いからではない。そう、船酔いだ。ムカムカとした感覚が体中を駆け回っている。


「……気持ち悪い」
「海咲さんのとこで休んでくか?」
「…どうやって行くの」
「背負って」
「………無理。吐く」


私の返答を受けた歩ちゃんの表情が渋くなる。心配してくれているのも確かだけど、出しにして海咲さんに会いに行こうとしたな、歩ちゃんめ。そんなことをしなくても会えるじゃないか。


「…こうなると、お前も海咲さんのとこに通うしかないか…」
「も?」
「あのインド。何の用だか、最近見るんだよ。不味いと思わないか?」
「………そう?」
「このっ!」
「いだっ!」


さっきまで私を優しく扇いでくれていた団扇に、叩かれた。



20120517

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