疑惑

「歩ちゃん!」
「お、なまえか!どうした?」


派手なピンクのシャツを纏った背中に呼び掛けると、歩ちゃんは快活な笑みを浮かべて片手を上げる。何だか機嫌がよさそうに見えるのは、気のせいだろうか。


「山田くんに会った!?」
「山田?山田って誰だよ」
「えっとね、あのー…ターバン巻いてアヒル連れてる男の人!」
「………あいつか!!」


途端に歩ちゃんの声が怒気を孕んだ。なんだ、山田くんと何かあったのか。それともアヒルの――タピオカ、タピオカと何か。


「何かあった?歩ちゃん」
「あ?まあ色々とな、あったな。結果的にはよかったんだが、あいつまさか狙ってるんじゃないよなと…」
「狙う?…海咲さん?」
「………」


ビンゴ、らしい。
山田くん、海咲さんみたいな人が好きなのか。いや、歩ちゃんの早とちりの可能性だってゼロじゃない。私がそんなことを考えていると、歩ちゃんは咳払いを一つしてから「そういや」と言葉を続ける。


「大物でも狙ってんのかね。この辺りで釣れる大物は何か、聞いてきやがった」
「釣り…」


偶然山田くんと会ったあの日、彼は真田くんとハルくんを見詰めていた。二人は釣りのための練習をしていたんだったか。そして歩ちゃんの大物発言。山田くんはやっぱり。


「今度船を出してやるかって話もしたんだが――…ん?なまえ、お前まさか」
「何?」
「……任せとけって。そん時にはお前も、乗せていってやるからよ」
「はっ!?いやいやいや、違う!絶対勘違いしてるよ歩ちゃん!!」


気にはなるけど、正体だって!



20120514

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