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ふむ、と。
顎に手を添えたシーザーは何かを考えている。束の間の休息の時間、席を外したジョセフさんを珍しいとでも言いたげに追いかけた視線は、今は何事もなかったかのように私に戻されていた。

当初よりは、近付いている。同じメニューを熟していることが要因なのか、シーザーとジョセフさんの間にギスギスとした空気は薄れてきたのだ。私とジョセフさんも、元来の彼の気さくさで打ち解けるのにそう時間は必要なかったけど。


「私、何かおかしなことを言った?」
「いいや。一つも」
「なら何を考えてるの?」
「なまえのことを」
「……」


恥ずかしいと思うのは、普通。これをジョセフさんに言われたって恥ずかしいんだから。ただシーザーは、その雰囲気だとか声色で倍増するだけで。


「私のこと?」
「ああ。JOJOみたいな奴が好みだったのか、通りでとな」
「好みって私…えっと、そう見えない?」
「そういう意味じゃあない。悪くはないと思う」
「そう」


話題がジョセフさんになるのも自然な流れ、修行がどうだとか、最近はまあやるようになってきただとか。私は、シーザーはジョセフさんが好きなのかと聞いたんだ。そうしたらそのまま、返されて。


「…それ、シーザーはジョセフさんを認めてるってこと?」
「………まあ、認めてないわけじゃない」
「そっか」
「なまえ、話題を逸らそうとしても無駄だ」
「してない、そんなこと」
「そうかな?」


シーザーの瞳が輝く。ここで視線を外してしまえば思う壷、ジョセフさんが好き、シーザーが好き。それでいいじゃない。二人とも、好きなのだ。それ以上を探られるわけには。


「好みって私、そのあとに何を続けようとしたんだい?」
「…何も。そういう意味の好みじゃないってだけで」
「そういう意味?」
「シーザー、何だか意地が悪くない?」
「そうかもしれないな」


笑うとシーザーは頬に手を伸ばす。何をなぞったのかと思えば、垂れ下がった髪を耳に掛けただけで。

そんな別に、必要のない動作。襲ってきた緊張に呼吸がほんの数秒、止まった気がした。


「…シーザーが好き」
「ん?」
「あっ、ジョセフさんのことも、勿論好きだけど」
「…おれもなまえを好きだと思ってる。JOJOのことも、嫌いじゃあない」
「いやだ、もう」
「顔が真っ赤だな、シニョリーナ?」
「笑わないでよ、恥ずかしいんだから」


最初からごまかしきれてなんか、いなかったんだろうけど。でも。



20131117

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