due

取り込んだシーツを畳んでいると端の方を引っ張られる。何事か。顔を上げると、そこにいたのは。


「…シーザー」
「邪魔だったろ?」
「そんなことない」
「起こしてくれて構わなかったんだぜ?シニョリーナの手伝いなら、喜んでやるっていうのに」
「…でも、すごく気持ち良さそうに寝てたから。疲れてるんでしょ?」
「目覚めて最初になまえの顔を見ればそれも吹き飛ぶさ」
「……でも、それでも。起こしたくなかったの、シーザーを」


跪く、というのは正しくない。屈んで真っ直ぐ私の目を捉えるようにするシーザーから逃れるのは、多分無理で。何よりも私自身が見詰めていてもらいたいと思っている、綺麗なその瞳に。込み上げる感情を逃がそうとしていると、シーツに触れていた指がいつの間にか私の手を握り込んでいた。


「優しいな」
「優しいっていうのとは、少し違うと思う」
「なら可愛い」
「…そっ、それはもっと、違うと思う」
「いいや。おれを見て、色々と考えていたんだろう?今だって困ったような、嬉しそうな。なまえは可愛らしいよ」
「………っ」
「そんなところも好きだな。愛おしい」
「シーザー、」
「なまえは?」
「私、は…」


それこそ日常会話のようにシーザーは言うのに、どうしたって私は慣れない。何時も顔が熱くなって、何時も柔らかいシーザーの笑顔を受け止めることになる。「スケコマシだ」と、ジョセフさんは鬱陶しそうに吐き捨てていた。


「………私は、いいじゃない、別に」
「何度紡がれても飽きない言葉もあるのは知ってるかい?」
「…言ったことない」
「いいや。なまえの言葉はすべてそれだ」


手伝おう。
本来はそれだけで、よかったはずだ。



20131110

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