Case4.5

魂の収集は完了した。後はラグナ=ザ=ブラッドエッジと第十三素体が交戦している中にノエル=ヴァーミリオンが飛び込むだけ、なのだが。


「――…こういうパターンもある、と」


窯に現れたのはラグナではなくノエル。目に映る光景は間違いなく第十二素体と第十三素体の対面である。怯えた声は無機質に、互いに同じことを飽きずに復唱する様は流石は人形だと言わざるを得ない。

ところで、死神と第十三素体が黒き獣に変じぬための方法だが。実に単純な話、ノエルにラグナを引き上げてもらえばいいのだ。ジンでは落ちて英雄に生まれ変わるだけ、だからこそノエルとラグナに出会ってもらわねばならない。当然ハザマもそれを最善として思考を巡らせていたわけだが、目の前の劇にこれはこれでと思わず頬を緩めてしまった。どうして今まで考えなかったのか、不思議でならないくらいだ。

早い話、ノエル自身に第十三素体を窯に落としてもらえばいい。彼女の戦闘能力は異常、他に特出した部分がないにしろ戦闘能力さえ高水準であれば問題はない。それ以外はただのお飾りであり、ここを抜ければそのベルヴェルクにも消えてもらうのだ。まあしかし、邪魔物が役立つ機会が来ようとは。やはり物事は視点に依存しているのだと痛感させられる。


「げ。…あーあ、マジか」


目が追うのは白銀。戦闘どころか人格、ノエルという存在を確立させる魔銃だ。まるで映画のワンシーンのように弧を描き、ノエルの手から離れた銃はすぐには反応出来ぬ場所に落ちる。排除、響く機械的な音と発した人形に動揺などあるはずもない。

ああ、世界を進めるいくつかの手間が省けるだけではなく。ノエルが深く第十三素体と接触することで自分自身が何者であるかを、人間ではなく素体、世界の眼なのだとこの段階で自覚してくれた可能性もあったのか。もう、有り得ないことになってしまったが。


「まーた消えるわけ」


だが、これでまたナマエに。


「……面倒な」


心が揺らいだのは気のせいに違いない。頭を振れば簡単に、忘れてしまえるのだから。



20120618

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