降り立つとまるで迷子のように辺りを見回す少女。あれを軍人と言って誰が信じるのか、まあしかし、ハザマに必要なのは軍人であるノエル=ヴァーミリオンではなく蒼の継承者であるノエル=ヴァーミリオンだ。彼女の軍人としての性格はハザマには少しも関係がないと言っていい。
「こちらですよ、ヴァーミリオン少尉」
「へっ?…えっと…?」
「あれ?まだ聞いてませんか、これは失礼。私、今回ヴァーミリオン少尉の補佐を任されました諜報部のハザマです。戦闘ではお役に立てませんが、情報収集でなんとか、ね?」
「はざ…あっ!は、ハザマ大尉殿!私は第四魔道師団、ノエル=ヴァーミリオン少尉であります!」
「おや、これはまたご丁寧に。よろしくお願いします、少尉」
少女の声は元々高い方だが、緊張がよりそうさせているのだろうか。頼りない、一言で表現してしまえばそれに尽きる音。上官そっくりの瞳は少女と呼ぶことさえ躊躇ってしまいそうな――…幼児、だろうか。そんな無垢さを秘めている。
「あの、ハザマ大尉。性急ではありますが、少佐に関して何か情報は?」
「あー…胸を張って言えることではないのですが、これがまったく。恐らくは死神を追ってカグツチに向かったのではないかと、その程度ですね」
「そうですか…」
「その分ここでの調査は重要になりますよ。私は支部に異変がないかを調べますので、少尉は街での聞き込みをお願いします」
「はい、わかりました」
ツバキやマコト、それこそ捜し人であるジンならば詮索しようものを。とは言えこれにも幾つかパターンがある。死神を危惧して支部の調査を申し出てたノエルの説得を試みたり、自信がないから来てほしいと言われたり。すんなりと受け入れられた今回は運がいい。この調子で進んでくれたなら、文句なしの世界だが。
「…さて」
望む存在、欠かせぬ蒼。手間の掛かることに、世界の眼でなければアマテラスを見つけ出すことは不可能なのだ。
「こっちは下準備でもしとくかね」
ラグナ=ザ=ブラッドエッジ。あの死神と出会って、第十三素体から引き剥がしてもらわなくては。
20120617