同棲ではなく同居です

「ラグナがテルミさん達に会ったのって何時?」
「は?…何時だろうな。十年は前だろ、多分」
「その時は高校生?」
「もっとガキだ」
「あー、ラグナじゃなくてテルミさん達」
「………何言ってんだ?あんな高校生いて堪るか」


げんなりとした顔で食べるチャーハンははたして美味しいのだろうか。いや、私の質問が悪かったのが原因か。ごめんねラグナ、せめてラーメンは伸びる前に食べてね。


「じゃあ大学生かな…ボランティアとか」
「ボランティアって面じゃねえのがいるだろ一人。そもそも、学校なんて通ってたのかよ」
「…それは私も疑問なんだけど」
「教会に来たのも、シスターの姉ちゃんが可愛い妹の頼みとかなんとかで引っ張ったって話だしよ」
「ふうん」


鈍い音と振動で携帯が鳴っていることに気がつく。一言断って確認すると、表示されているのはなんと、テルミさんの名前だ。


「え?何でテルミさん?」
「テルミ?」
「電話だししかも。え、何で?本当に何で?何かしたっけ?」
「…出る必要ないだろ」
「いやでも――…切れないしさ、やっぱ出ないと失礼は失礼…確かにテルミさんなんだけどさ、常識としてさ」
「……それはっ、…そうだが…」
「出る」
「あ、おいっ!」


短く宣言して携帯を耳にあてるとラグナは物凄く渋い顔をする。ごめん。何がごめんなのかはよくわからないけど。


「……もしもし」
「やーっと出やがったか。おっせえんだよメスガキが」
「…すみませんでしたー」
「カケラも反省してねえだろ。用件だけ言うわ、今日はさっさと帰って来い」
「は?」


突然の言葉に疑問だけ返すと続いたのは舌打ち、しかしそれはすぐにぎゃあぎゃあと喚く声に変わる。遠くなっていく音、次に聞こえたのは空気を変えるような咳払いだ。


「失礼を致しました、ミョウジ殿」
「…ヴァルケンハインさん」
「大切な部分が伝わりませんで。実はですな、本日ミョウジ殿の歓迎会を考えておりまして」
「私の?」
「いらしてから日は経ってしまいましたが、いかがでしょうか?」
「――…それは、はい。とっても嬉しいです」
「それはようございました。では、大学が終わりましたら道場までご足労願えますかな?」
「ハクメンさんに会えばいいんでしょうか?」
「はい。入り用がありましたら何なりとお申しつけください。その旨は伝えておりますので」
「ありがとうございます、ヴァルケンハインさん」
「いいえ」


また遠くなる声。耳に刺さるような感覚は、間違いなくテルミさんだ。


「わかったか、ミョウジ」
「はい。…というか、それなら最初から言ってくれたらいいのに」
「帰って来いで伝わんだろ」
「ハクメンさんに会う用もあったじゃないですか」
「あーはいはい悪かったですー。んじゃな。あ、ラグナ君によろしく〜」
「何をよろしく、あ!………切ったよ」


思わず吐き出した溜め息に重なる視線、微妙な表情。何か言いたそうな雰囲気はあるけど何も言わない。ラグナはラグナなりに、ルールを決めたのだろうか。


「歓迎会、してくれるんだって」
「…よかったじゃねえか」
「そうだ。ヤヨイちゃんにね、同棲してるんですかって聞かれちゃって」
「ヤヨイちゃん?…ああ、ジンの友達か。つか同棲って、やっぱ普通はそう思われんじゃねえか」
「そんなことないんだけどね。あっちがこっちに興味ないんだし」
「……その方がいいだろ」


それはどういう意味だろうか。ジン君にもそんな風に言うから誤解を生むというか、私が睨まれるはめになるんじゃないか、なんて。


「…本当にテルミさんと何かあったら、無事じゃないでしょラグナ」


なんて、冗談だけどさ。


fin.

20131211

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