お互いの関係性

言うなればニヤリ。実に嫌らしい笑い方だ。

ハクメンさんがヤヨイちゃんに抱いている感情とは何なのか、後ろめたい想いがあるわけではないけど、本人に尋ねるのは憚られた。だからハクメンさんがいない今がチャンスだと思ったんだけど。

まあ、それを他人に聞くのもあれだけどさ。


「テルミさん、前言ってましたよね?ハクメンさんは本に思い出があるって」
「ん〜?…ああ、言った言った。で?」
「いや。それはヤヨイちゃんに関係があるのかな、と」
「何でそう思った?」
「…何となくとしか言いようが…」
「本人に聞きゃいいだろ、俺もおっさんも知ってんぜ?獣兵衛もな」


知ってる人がいるから聞いてもいいってことはないだろう、絶対に。最近知り合ったばかりの私には教えたくないかもしれないし、そもそもテルミさんの経緯も真っ当かわからない。こうやって最初から決めつけるのも、よろしくないけど。


「………」
「…知りたい?」
「…知りたくない、と言ったら嘘になります」
「しゃあねーなァ〜!特別に教えてやんよ、ナマエちゃん」
「…………うーん…」
「悩むなら聞いちまえって!愛しいハクメンさんのことだぜ?聞きたいだろ?ツバキちゃんに遅れは取りたくないだろ?」
「…少なくともテルミさんよりは好きですけど」
「あら酷い、傷付きました私」
「何なんですか!……えっと、それで…」


ヴァルケンハインさんはレイチェル様の執事、テルミさんはレリウスさんのところで働いてる。共通の知り合いに獣兵衛さんがいて、ラグナとジン君のことも知っている。そんな情報はあるけど、ハクメンさんの個人的な関係は知らない。それがわかるとなると、大変申し訳ないことに好奇心が勝ってしまうのだ。


「うっし、話してやんよ。…随分と昔の話なんだが、ハクメンちゃんにはアヤメって知り合いがいてな」
「アヤメさん…」
「そいつはハクメンちゃんに憧れてたみたいでなァ。街の図書館で会うくらいのもんだったらしいんだが、会うたびくっついてたんだと」
「…ハクメンさんが図書館…?」
「ま、連絡先も知らねぇから環境が変われば当然会わなくなるわけよ。甘酸っぱい青春?可愛いことに思い出しちゃうの、ツバキちゃんそっくりだから」


初恋、なのだろうか。
恋だとしたら、ハクメンさんにもそんな感情があったんだと失礼ながら思ってしまう。テルミさんが話すにしては不似合いな、しかも図書館。確かに今は古書店で働いてるけど、似合わないことこの上ない。


「…テルミさんとヴァルケンハインさんもその頃からの知り合いなんですか?」
「同級生だしな」
「へえ………んっ?」
「何だよ」
「同級生っ!?三人がですか!?」
「あ、ちなみにそのアヤメってのツバキちゃんの先祖な。いや、余計にドキドキだよなァ!マジウケる」
「先祖、せん…え、ちょ、テルミさん何歳!?」
「さ〜て。大学なら何歳でもアリだろ」
「ああ。じゃあ大学時代の話…」
「いンや。高校だっけ?」
「どういうっ、うわっ!見たいけど怖いっ!想像できない!!」


テルミさんだけはうん、何となく想像できるけど。



20131210

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