ヴァルケンハインさんはレイチェル様のところに、ハクメンさんは稽古に。そのため今ここいるのは遅くからの出勤でいいらしいテルミさんと訪ねに来たラグナ、それから私の三人だけである。
ラグナからは不機嫌オーラがだだ漏れで何となく居心地が悪い。テルミさんは少しも気にしてないみたいだけど。
「ラグナ、今日はどうなの?バイトは?」
「バイトは夜からだ」
「うっわ引くわー、ラグナ君ってストーカー?ナマエちゃんと約束してたわけじゃないっしょ?」
「テルミさん、そのナマエちゃん止めてください。呼んだことないくせに」
「え?」
「………何なんですか」
「嫌がらせ?ラグナ君の素敵なお顔を拝むための」
「…テメェこそ何なんだよ」
「同居人?あ、同棲つった方がいい?」
「このっ…!」
「ヤダこわあい。落ち着いてェ、ラグナくぅん」
「………ムッカつく!」
ラグナとテルミさん声大きいな。あ、そうだ、お茶でも出そう。ヴァルケンハインさんがお菓子作ってくれたみたいだし。まあ、テルミさんにはあげる必要ないって言われたんだけども。
「んでェ?ラグナ君は何が心配なわけェ?つか今どんな気持ち?だあいすきな彼女の浮気現場?彼女の親にご挨拶?」
「どっちもちげぇよ!!俺はただ、テメェみたいなゴミクズ野郎とナマエが一緒ってのが気に入らねえんだ!」
「それに比べて俺は真面目で誠実でナマエを愛してるって?」
「だからちっげえよ!!」
「怖い顔しないのォ、ナマエちゃんに嫌われんぜェ〜?」
何を馬鹿なことを。聞いてる私が恥ずかしいんだけど、どっちも何も考えてないんだろうな。いや、テルミさんは煽りの塊か。本当に単純だなあ、ラグナって。過剰反応が餌に、そりゃ私も人のことを偉そうに言えた立場では、ない気もするけど。
「そうそう心配事。あれか、ラッキースケベ的な?うっわラグナ君ってばそんな些細なことで興奮しちゃうんだァ?」
「何の話だよ!!…まさかテメェ、覗いてっ」
「あんな貧相な体好き好んで見るかよ」
「なっ、お、驚かせ――…は?待ておい何で、まさか見たんじゃ、」
「なわけないでしょ!?何言ってんのラグナ!!」
「はあっ!?テルミィ…!!」
「ネタばらしすんなよナマエちゃあん。つっまんねー」
ニヤニヤニタニタ、この人は。決めた、絶対テルミさんにはお茶出さない。
20131108