二つの生活

「お帰りなさい、ヴァルケンハインさん」
「只今戻りました。ミョウジ殿、何も問題は御座いませんでしたか?」
「はい。ハクメンさんのお蔭で部屋も綺麗に片付きまして」
「そうですか、それはよう御座いました」


玄関の扉を開ける気配だとかそんなものは感じなかったけど、一体いつ帰ってきたんだろう。ヴァルケンハインさんが出てきたのは間違いなく彼の部屋、数日前にもこんなことなかったっけ。


「ヴァルケンハインさんもお仕事終わったんですか?泊まりだから大変な…」
「ああいえ、昨日は細かな掃除をする必要が御座いましたので。レイチェル様を彩るものは調度品から美術品まで、美しくあらねば相応しくありませんからな」
「……はあ」


レイチェル様。
ヴァルケンハインさんにとって大切で堪らないらしいその人に会うことはあるのだろうか。確かテルミさんは(嫌味っぽかったけど)お嬢様と言っていた。豪邸にでも住んでるのかな。


「レイチェル様の家とここと往復してるんですか?」
「週に一度は大掃除も兼ねて城で過ごしますが、そうですね。レイチェル様のご意向もあり、今はあの二人と暮らしを共にしております」
「レイチェル様のご意向、ですか」
「本来はハクメンの様子を見るのみだったのですが、気が付けば獣兵衛殿やテルミも転がり込んできましてな。いつの間にやら、同居という形になりました」
「へえ…」


レイチェル様はテルミさんともハクメンさんとも知り合い。レイチェル様の年齢は知らないけど、ハクメンさんとテルミさん、ヴァルケンハインさんは相当な年齢差があるように見える。一体何の共通点があって一緒にいるんだろうか。それに加えて獣兵衛さん、結婚相手も昔から付き合いのある人らしいし、全員並ばれたところで何も見出だせないな、きっと。


「…え、というか」
「如何なさいましたか?」
「ヴァルケンハインさんってお城に勤めてるんですか?」
「ええ、レイチェル様にお仕えしております故」
「……執事とか?」
「所謂」
「………はあ〜…」


ますますわからない、ここの人達。



20131030

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