当番制

「ありがとうございます、ハクメンさん。部屋に荷物を纏めてくださったのもハクメンさん、なんですよね?」
「気にする必要は無い。…猫が無理を謂ったな」
「いいえ。こっちの方が何かと便利だし、バイトも見付かったので。こちらこそ、ありがとうございます」
「…然うか」
「イチャついてねぇでとっとと振り分けろやメスガキ。おら、ハクメンちゃんはお手々のもの運びましょうね〜」
「だから勝手に開けないでくださいって!!」
「此れは、棚の上か」
「あ、はいっ!テルミさん待って!」


ハクメンさん。謎に包まれていた正体は、何と言えばいいのか。人と呼ぶにはメカっぽくて、でも体つきは人間。まあ亜人もいる世界だ。初めて見るタイプだけど、これも一種の種族なんだろう。


「見られて困るもん入れてんのかよ」
「そうじゃ、ほら!下着とかあったら嫌でしょう!」
「は?テメェの貧相なカラダに欲情する人間なんざいねぇから。しかも下着とかもっと特殊趣向だろ。あ、興奮してほしい変態?」
「ちっがいます!!本当に失礼ですよねテルミさんって!!」


獣兵衛さんが言ってた大問題児って間違いなくテルミさんだ。何だよこの面倒な上に物凄く腹の立つ人。箪笥の角に小指ぶつけないかな、思いっ切り。


「ハークメンちゃ〜ん、これそっちに乗っけて」
「貴様が何とかしろ」
「重くて持てなーい。俺様潰れちゃうわァ」
「………ナマエ=ミョウジ、テルミの指定通りで問題無いか」
「はい。…あの」
「此れもか。…随分と本が多いな」
「ハクメンさんもお好きですか?」
「否――…嫌いではないが、少しな」
「少し」


表情は見えない。でも見えたところで、豊か過ぎるテルミさんが分けてあげたらいいんじゃないってくらい動かなそうな気がする。私が持っていたものに何かあるのか本が大切なのか。聞ける雰囲気ではないし、私が知るべきことでもないのだろう。


「懐かしい思い出って奴だよ。なァ、ハクメンちゃん?」
「手を動かせ」
「腹減ってんの。動けるかって」
「………」
「おっさんいねぇしハクメンちゃん作れや。あ、サバイバル食とか勘弁な。俺の舌って繊細だから」
「どの口が…私も料理は出来ん」
「つっかえねぇなァ。その形通り力仕事だけかよ」
「文句を垂れるだけが仕事の貴様に謂われる筋合いは無い」
「稼ぎ入れて生活費賄ってますー」
「…………」


ハクメンさん、イラッとしてるんだろうな。聞いてる私もイラッとするし。さっきからテルミさんがしていることなんて箱開けてハクメンさんに回して文句言ってるだけだと思うんだけど。一番楽だろ。


「…ミョウジ」
「はい?」
「飯くらい作れんだろ。とっととやれ」
「はあっ!?」
「役割ぶんたーん。おっさんいないときの料理当番な、はいヨロシク」
「なんっですかそれ!」
「ゲテモノ食いたくねぇし。向き不向きって重要よー」
「押し付け、」
「は?まさか私オンナノコだから全部オトコノコにやってもらうのーなんて思ってねぇよな?」
「思いませんよそんなこと!」
「んじゃ出来ること、今必要なことって何だァ、ナマエちゃん?」
「ああもうっ!!!」


その笑顔、大嫌いだ!!



20130911

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