マコトは楽しそうに士官生の頃の話をする。ツバキも微笑みながら時々マコトの言葉に付け加えていて、二人は随分親しいのだと容易に知ることができた。


「マコトとツバキ、それからノエル。三人は仲良しなの?」
「そうだよ〜すっごく仲良し!あ、ねえツバキ、久々に三人でご飯食べない?ノエルも先輩への報告終わったら来るだろうしさ」
「いいわね。…それよりマコト、さっきから言おうと思っていたのだけれど、キサラギ先輩ではなくキサラギ少佐よ」
「あ、ごめんごめん!んじゃノエルにいい報告をするためにも、この子の知り合いさくっと見つけちゃおっか!」
「もう。その前にマコトはハザマ大尉に会わなくてはいけないのでしょう?」
「う〜…ツバキって本当に真面目…なんかグレードアップしてない?」
「気のせいよ」


わたしにはこうやって軽口を叩ける相手がいない。そもそも、わたしは監視用の人形として作られたのだ。まだ目的すら果たしていない状態、三人と一緒に出掛けられたら楽しそう、とは思うけれど。


「………」
「ん?君、お腹空いた?」
「ううん」
「なら具合でも悪い?」
「ううん」
「寂しいのかなやっぱ。よっぽど好きなんだね、その捜し人のこと」
「好き?」
「あら、違うの?」
「……好き、なのかな。わからない」


わたしが首を横に振ると二人は悲しそうな顔をする。どうしてそんな顔をするんだろう。その人を捜しているのはわたしがすべきことだからで、でも、どうなのかな。


「あのね、わたしが捜してる人。マコトみたいな――…」
「あたし?」
「ナマエっ!!」
「うわっ!?」


求めるものを漸く見つけたというようなわたしを呼ぶ声。はじめてマコトを見たときの血の沸騰が、再び襲い掛かる。


「ハザマっ!!」
「ここにいたんですか。まったく、手間を掛けさせないでくださいよ」
「ハザマ、大尉…?」
「おやこれはナナヤ少尉、任務ご苦労様でした。…と?」
「あっ、し、失礼いたしました!私、第零師団所属ツバキ=ヤヨイ中尉であります!」
「ああ、ヤヨイ家の。私、諜報部のハザマです」
「ハザマ、ハザマ!わたしね、ハザマ捜してたの!」
「あのねぇ…それ私の台詞ですよ、ナマエ」


マコトが何か言いたげにわたしとハザマを交互に見る。会えたことが嬉しくて思わず抱き着くと難なく受け止めてくれたハザマ、それが、マコトに違和感を与えたのだろうか。


「お知り合いですか、ハザマ大尉」
「ええまあ。いやあ流石は悪魔、見つからなかったり少しでも損傷があれば私が危なかったんですよ、ナマエ」
「ハザマが迎えに来てくれたらよかったのに」
「暇じゃないんです」
「……どういった」
「諜報活動ですか?少尉」
「そういうわけじゃ、」
「ナマエ。あなたは私のようには出来ていないんですから、勝手はしないこと。私だって痛いのは嫌ですし」
「うん」
「反省してるのかな…」


吐き出された溜め息、ハザマに触れて感じるもの。ノエルとは違う、わたしの好きな碧だ。


「マコト!ツバキ!」
「何かしら?」
「うん?」
「わたし、ハザマのこと大好き!」
「あ、そっか…そう、うん…」
「まあともあれ、見つかって良かった、わね…」
「……どういう意図があるんですかね、これ…」


わたしの言葉を聞いた三人は、何故か苦笑いを浮かべていた。



fin.

20120601

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