栗鼠

はみ出した大きな尻尾はとても柔らかそうで、亜人の象徴ともいえる獣の耳は興味深げに動いている。つい目を向けると、栗鼠の亜人は何やら興奮気味な声を上げた。


「かっわいい子だねえ〜!迷子?お父さんとお母さんはどこかな?」
「いないよ?」
「えっ!」
「そっ、そうだったの!?なら、捜しているのは肉親ではないということ?」
「違う」
「これ、諜報部に任せてわかるのかなあ…」


弱々しく吐き出したノエルが亜人を見ると、亜人は考えるように唇を結ぶ。この亜人は確かマコト=ナナヤ。ここに身を置く上で支障がないように、一通りの名前は刻まれているらしい。


「う〜ん、そりゃまあ統制機構員ともなれば結構情報はあるけど…」
「マコト」
「あれ?あたしの名前知ってるの?二人に聞いたのかな?」
「知ってるの」
「口の軽い知り合いなのかしら…」
「ま、まあ、公務を話してるわけじゃなさそうだし」


揺れる尻尾、マコトはまだ考えているらしい。白、蒼、黒。マコトの黒はずっと見ていたくなる色だ。蒼も嫌いではないけれど、わたしは。


「…大尉なら何か知ってるかも」
「大尉って確か、ハザマ大尉、よね?」
「ハザマ?」
「ノエルは知らないんだ。キサラギ先輩は会ったことあるだろうから、てっきり」
「用が済んだら出ていかないと怒られるし…」
「あ!ハザマ大尉!!」


マコトの叫び声にノエルは周囲を確認し、ツバキは「ど、どうしたの?」と声を上擦らせる。廊下には、ハザマどころか誰もいない。


「そうだよ捜してたんだ!報告書渡さなきゃなのに部屋にいなくてさー…ひょっとしてキサラギ先輩のとこかなあと思ったんだけど、ノエル知らない?」
「え?えっと、今日は誰も――…あ、でも急に報告が上がることもあるよね…」
「他の諜報部員は知らないの?」
「大尉って誰にも言わずにいなくなるんだよ…」
「あ、あのさ。私これから少佐に渡すものがあるから、よかったらマコトも行く?…出来ればツバキも……あとっ!」


捲し立てるノエルはその勢いのままわたしを見てより一層語気を強めた。真っ直ぐな緑色の目は濁りのない、純粋な色だ。


「あなたも、どうかな?ハザマ大尉がいたらわかることもあるかもしれないし、もしかしたら少佐が何か、知ってるかも、しれないし…」
「……行く」


少佐、ジン=キサラギ、イカルガの英雄。いくつかの情報が、駆け巡る。



20120601

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