「待って!」
「わあっ!?」


捕まえなきゃ。蒼の背中を見た瞬間に理由はわからないけれど、ただそう思った。手を伸ばしても届かなくて、仕方がないから飛びつくように。目が覚めてから一番大きな声で呼び止めると、どうやら蒼は狼狽したらしい。


「なっ、ななな、誰ですかっ!?」
「ノエル!」
「つ、ツバキ!?この子、この子は一体…」
「私も会ったばかりで。ここに捜している人がいるようなのだけれど、…ノエルでは、ないのね」
「知らないよこんな子…ええっと…」
「ねえ?貴女が捜していたのは、この人?」
「………」


第十二素体、真の蒼。
確かに必要としている人はいるし、連れていけば褒めてもらえる。でも、今の私が捜しているのは、蒼じゃない。


「違う」
「そう…似ていたの?」
「全然」
「じゃあ、私に何かお話があったのかな?」
「ない」
「そう、なんだ…」


苦笑い。ツバキと蒼は顔を合わせて思案しているらしい。別に一人でも探せるから、二人が悩む必要なんてないのに。


「…ノエル」
「あれ?あ、さっきツバキが呼んだの聞いてたのかな?」
「私も花の椿の話を自分の名前だと思って、すごく驚いたの」
「でも、知り合いがいるなら知ってても不思議じゃないかもね」
「そうね。…そうだわ」


妙案だ、というようにツバキが手を打つ。ノエルは瞬きをするばかり、わたしも同じようにしてツバキを見詰める。


「諜報部ならそういった関係をすぐ調べられるかも。手間をかけることにはなるけれど、どうかしら?」
「ああ…うん、そうだね!じゃあ諜報部に、」
「ノエルにツバキじゃん!うわあ、なんか久しぶりに会った気がするよぉ〜」


ツバキから声へ。
わたしの目に映っているのは真っ黒な服を着た亜人。
ああ、まるで血が沸騰したみたいだ。



20120531

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