審判の羽

蒼い瞳、きりりとした女の人はわたしを見ると足を止めた。話しやすいようにか、わたしと視線が交わるところまで屈むと柔らかい微笑みを浮かべる。


「貴女、迷子?」
「違うよ」
「そうなの?…衛士というには幼いし、統制機構に知り合いがいるのかしら?」
「捜してる人がいるの」
「捜している人?」
「うん」


この人の髪の毛、どこかで見たことがある気がする。直接目にしたわけじゃないけれど、情報として焼き付いている色。


「…ツバキ」
「えっ?」
「ツバキだ」
「どうして私の名前を、」
「ツバキっていうの?」
「…ああ、花の名前」
「うん」
「驚いてしまったわ。私の名前もツバキだから」
「ツバキ、何?」
「ツバキ=ヤヨイよ」
「……中尉」


優しい顔をしたツバキはわたしの言葉に首を傾げる。中尉、ツバキ中尉。何かが引っ掛かって、捜している人に近付いたような、そんな。


「そう、ね。確かに私は中尉だけれど。…上官のご息女、でもここに…?」
「ツバキ?」
「ねえ?貴女が捜している人は、私と同じ服を着ている?」


ツバキの服は白を基調にしている。これは審判の羽。違う、わたしが捜しているのは、審判の羽じゃなくて。


「ううん」
「そうなの。…困ったわね、何か特徴は」
「あ」
「どうしたの?まさか見つかったとか、」


ツバキよりも奥、青を基調にした制服に金色の髪。この感じは。


「蒼」
「あお?」
「蒼だ」
「知り合い、え、ちょっと!」


蒼はどこへ向かっているんだろう。



20120531

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