54

「知らないのか」
「撤収だと言われたから従ったまでだ」
「………」
「そう険しい顔をするな。少しは労うとか、帰還を喜ぶとか。なあなまえ」
「え?あ、えーっと…そ、そう、ですね」


相変わらず、である。
清正さんが嫌味でも何でもなく宗茂さんに感謝していたとか、唐突な帰還命の理由を考えるギン千代さんへの軽口とか。意外だったり宗茂さんだなと思えたり、数年経とうがこの人は全く以って変わらないらしい。


「城の守備、助かった」
「勘違いをするな。柳川は立花の城であって、お前個人の城ではない」
「そうだな。余計なことを言ったか」
「…その調子でよく死ななかったものだな」
「普段から見ているくせに今更だろう」
「…………」


あ、眉間に皺が。
わざとだよね。絶対にわざと言ってる、宗茂さん。私個人の勝手な判断だけど、ギン千代さんは好意感情を素直に吐き出すのは酷く苦手で、苦手なんだけどわかりやすく表情から言葉から、つまり態度に出てしまう人だ。宗茂さんは指摘はしないけど知ってるから面白がる。好き、なんだな。単純に。

可愛く思うのはよしとして、そっとしておいてあげたらいいのに。その反応が好きだから無理なんだろうか、嫌な性格だ。

まあ、そこも含めて惹かれている私が言うことでもないけど。


「折角だ、もう少しここにいればいい」
「城の人間が喜ぶ、か?生憎とお前がいない間は私が城主として、」
「いいや。俺がそうしてほしいからだな」
「む、なっ、……なまえ!さっさとこいつを着替えさせろ!」
「は、はい!」
「ははっ」


何だろう。
この人は刺されたって死なない気がしてきた、有り得ないけどさ。



20111118

第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -