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ギン千代さんの凛々しさたるや、流石としか言いようがない。

城に戻った宗茂さんも「活き活きとしているな」と嬉しそうに笑っていた。視線だけで「当然だ」と返すギン千代さんはどこか照れているようで、口にしたらきっと怒られるだろうけどとても可愛いなと思ったものである。

今は、ひたすらに凛々しい女城主だけど。


「なまえ、お前は落ち着きがなさすぎる」
「す、すみません、」
「…宗茂が心配か?」
「……はい」


正式に妻である人の前で口にするのは憚られ、たっぷりと間を置く。意味はないけど。

ギン千代さんはさして気にもしていないようで、微笑んでさえいたのだから驚きだ。私は所謂横恋慕というやつになる、けど。普通、なのかな。確かに宗茂さんはモテそうだし、いちいち気にしていては疲れてしまうのかもしれない。


「ギン千代さんは、怖くはないんですか?」
「ないな」
「すごいですね…」
「そうか?」


思わず呆気にとられると、ギン千代さんは面白そうに口元を緩める。

だって、詳しい状況はわからない。もしかしたら酷い怪我をしているかも。最悪、死んでしまって。不安にならないのかな。耳にしただけだから詳しくはわからないけど、九州衆(ということは清正さんも。ギン千代さんは島津もか、と唸っていた)は城の守備のために残留しているのだという。命の下った四国や中国の大名は帰国、再出兵に備えている、とか。


「気を張りすぎているともたんぞ」
「だ、だって!」
「心配するな。あいつは平気だ」
「わからないですよ、そんなの」
「あれだけ根拠もなく死なないと断言する男だぞ?宗茂は。事実、何事もないような顔をして会いにくるしな」


言いながら苦笑するギン千代さんは、温かい。宗茂さんをちゃんと想っているんだと伝わってくる。ああ、敵わないなあ。


「どうした、なまえ」
「…いえ。ギン千代さんは、宗茂さんを信じているんだなって。少し照れ臭いです」
「なっ、……ま、まあな。どんな態度をとるかは目に見える。絶対に言うなよ」
「ふふっ、はい」
「島津にもだぞ!?」
「わっ、わかりました!」


島津さんには会わないと思いますけど!



20111117

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