ひやりとした風に身を縮めると幸村様に名を呼ばれる。大丈夫です。そう伝えれば、安堵したように微笑んでくださった。


「すまなかったな、なまえ」
「まあ、何故そのようなことを?」
「見事な紅葉とそなたを誘ったはいいが、寒い思いをさせてしまった」
「私は嬉しゅうございます。幸村様とこうして二人、過ごすことが出来るのですから」


屋敷の程近く、そこでは毎年見事な紅葉を目にすることが出来るのだと幸村様は笑顔で語られた。

私はこの地での暮らしが初めてだから何もかもが新しい。私を喜ばせるために色々と考えていらっしゃるのだ、と聞かされたときは嬉しくて堪らなかった。本当に良縁に恵まれたと思う。


「……どうだろうか?」
「美しゅうございます」
「そなたが気に入ったのならよかった。連れてきた甲斐もある」
「感謝いたしますわ、幸村様」
「いいや」


足元に気をつけるように、とのお声。私の我が儘にお付き合いくださった上にこうしてお気遣いもいただいて。口にはされずとも、歩調も私に合わせてくださっているのだとわかる。


「こうして満ち足りた日々を過ごしていけるのも幸村様のお陰。…私も、幸村様に何か」
「私がそなたにしたいと思うことをしているのだ。そう気にせずともよい」
「私も同じです。ご理解くださいませ、幸村様」


私が告げると幸村様は暫し考えるように足を止める。何においても真面目な方、そこもまた、愛おしいのだけれど。


「…ならば、これからも変わらず私の隣にいてほしい、というのは?」
「そのような。願われずとも、いたしますわ」



そっと手に触れると、幸村様の顔が綻んだ。



20110724

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