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もう大丈夫なのかを尋ねると、曖昧な微笑みに乗せて「そう願ってはいる」と言われてしまった。用事というのは、どうにも宗茂さんの意思では操作できないことらしい。疲れたとも苦々しげに零していたし、戦、だろうか。

いやでも、豊臣秀吉が天下統一をしたわけで。天下統一以降の大きな戦と言われて思いつくのは関ヶ原、だけどあれは豊臣秀吉が死んでからだ。他に何か。


「あ」
「どないしたん?なまえちゃん」
「いや、いえ。…何でも」


何だっけ、あれだ、文禄に慶長の役。宗茂さんはそれに行っていたということだろうか。なら今回のが文禄だろうから――…つまり、宗茂さんはまたいなくなってしまう可能性が、ある。


「そうどす、宗茂様。お訪ねにいらしたなら、声掛けてくれたらいいのに。なまえちゃんがなかなか戻らんから見に行ったら、いらしたはるんやもの」


驚きました。
宗茂さんにお茶を出しながら愚痴のように零す阿国さんの真意はわからない。清正さんを見る目も悪戯っぽく煌めいて、向けられた清正さんは居心地が悪そうだ。


「清正様もあれよあれよと引っ張られて、難儀なこと」
「本当にな」
「断りはったらええのに。ご友人を大切にしはるんやね、清正様は。宗茂様が喜んだはったら嬉しそうやもの」
「ほう。それは知らなかったな、清正」
「煩い。…ところでだ、なまえ」
「はい?」


点てたお茶は初めて飲んだ。そうだよね、これが普通。どんどんこうやって馴染んでいっている気がする。


「宗茂に寄っている気がするんだが」
「ん?寒いならもっと傍にくるか?」
「いっ、いえ!大丈夫、問題ないです!」
「季節を考えろ。寒くはないだろう」
「わかっているさ」
「やあ、恥ずかしなったん?離れんでもええのに…ほんに野暮天や。なあ、宗茂様?」
「そうだね。少しはなまえと俺の感情を汲み取れ、清正」
「悪かったな野暮天で!」


横顔を盗み見るととても穏やかに笑っている。ああ駄目だ、涙が出そう。



20111019

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