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「本当に、宗茂さん?」
「ああ。…着物が変わったな、なまえ」
「あ、はい。阿国さんからいただいて、」
「成る程」


久しぶりの宗茂さんの声は、何処か満足そうに聞こえる。私が嬉しいと思っているからそう聞こえるのかな。あ。また少し、抱きしめる力が強くなった。


「……えっと」
「ん?」
「えっと、あの」
「うん」
「あの。…おかえりなさい」
「なまえ、折角だから清正にも言ってやってくれ」
「は、」
「勝手に突き進むな、馬鹿!参拝に来たわけでもなし、あの巫女に挨拶くらいしろ!」


抱きしめられたまま景色が変わって、お社を見ていた私の目は清正さんの姿を映し出す。思いっきり顔を顰めた清正さんは宗茂さんの腕に収まる私を確認すると、ますます険しい顔をしてみせた。


「お、お帰りなさい、清正さん」
「…ただいま。宗茂、お前の侍女が何でここにいる。出雲に出掛けるのもこいつを迎えに行くためかよ」
「問題か?」
「俺が聞いてるのは、…ったく。お前に言っても無駄だったな」


清正さんにもってことは、清正さんも宗茂さんと同じところにいた、と。何で清正さんを連れて来たんだろう、宗茂さん。


「清正がお前に会いたがっていてな」
「え?」
「嘘を吐くな。秀吉様への報告を終えて早々、なまえに会いに行くとか言ったのはお前だろう」
「…ほっ!本当、ですか?」
「ああ。俺は無理矢理引っ張られただけだ」
「俺はお前も会いたがっているものと思っていたが」


体勢から体温は感じるけど、宗茂さんの顔はよく見えない。清正さんだってそれはもう宗茂さん以上に久しぶりに会うわけだけど、失礼ながら宗茂さんの顔が見たくて仕方がない。ただでさえ嬉しさを隠しきれていない心臓。宗茂さんの顔を見たら、心臓どころか表情にも出てしまうんだろう。


「宗茂さん」
「何だ、なまえ」
「顔。顔が見たいです」
「…ああ、そうだな。俺もしっかりとなまえの顔が見たい」


離れていく寂しさを感じながら、振り向いたら宗茂さんがいるんだと思うと幸せで堪らない。また暫くは言葉を交わしていられるんだ。私が帰る日まで。


「…宗茂さんだ」
「なまえだな」
「ふふっ。お帰りなさい、宗茂さん」
「ただいま、なまえ」


うん。
間違いなく、本物だ。



20111017

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