「やあ、どないしやったんどす?宗茂様。わざわざうちに訪ねにいらして」
「君に話があってね。いいかな?」
「はいな。まあ、なまえちゃん連れて来はったんやねぇ。そんな緊張せんでええんよ、なまえちゃん」
「あ、はい…」
まるで私と宗茂さんが訪れることを知っていたかのように、柔らかい笑顔で出迎えてくれた阿国さん。勧進活動は終わったのだろうか。「どうぞこちらへ」と告げる背中に着いていく。話の内容、言わなくても気付いてるんじゃないかなあ。
「宗茂さん」
「どうした。怖いなら手でも繋ぐか?」
「そういうことじゃ、」
「なまえちゃんに会うてから暫く経ったけど、なんやますます仲良うなったはるなあ。可愛らしいこと」
「そう見えるかな?」
「それはもう」
「…前よりはまあ、親しくなれたとは…」
そう見えるなら、嬉しいと思う。宗茂さんはどう思ってるのかな。私と仲良さそうだって言われて、嬉しいんだろうか。
「そんならなまえちゃんをしっかり守らしてもらわんと。宗茂様に怒られてしまいます」
「話が早いね」
「そら、うちかて色んなお話聞いてますもの。噂は風に乗ってやってくるものと違います?」
「ああ、違いない。なまえ、俺は巫女さんと話があるから適当に時間を潰しておいてくれ」
「え?…はい、わかりました…」
適当に、か。
深い意味なんてないんだろうけど、急に寂しくなってしまった。
20111004