頭を撫でられている、気がする。確か柳川城に着いてから、宗茂さんと清正さんと一緒になって軽くではあるけど、飲んだんだっけ。二人が何時まで飲んでいたのかは知らないけど、私が途中で眠ったのは間違いない。ああ、なら部屋かな。
「……?おはようございます、宗茂さん」
「おはよう、なまえ」
目を開くと最初に写ったのは天井ではなく、宗茂さん。ああ、少し頭がぼーっとするなあ。穏やかな微笑みを浮かべた宗茂さんに清正さんの所在を尋ねると「すぐそこだ」と返された。あれ。部屋、じゃないのか。そうだ、考えてみれば私の部屋はないんだ。
「おはようございます、清正さん」
「ああ」
畳の上には徳利が何本か。成る程、二人は夜通し飲んでいたわけか。じゃあここは飲んでいた部屋、宗茂さんの部屋、だったような。
「体調は?」
「大丈夫です」
「そうか」
宗茂さんの体温が心地いい。また眠ってしまいそう――ん?
「――……っ!?」
「おお、元気だな」
今更ながら自分の状態を把握し勢いよく起き上がる。何でもないように笑う宗茂さんには本当に何でもないんですよね、わかってます。
「すみませんっ!!」
「いいや。安眠出来たならよかった」
「…あの、ずっと、ですか?」
「ああ」
「すみません…」
二人が眠るより先に私が眠ったのは確かで、しかも布団や畳ではなく宗茂さんの膝を借りる、というとんでもないことを仕出かしてたらしい。
膝枕をされたのは初めてだ。されたというか、私が勝手に枕にしただけだと思うけど。よく眠れはしたのに何か凝ったような感じがするのは、その所為か。
「人が眠るのに膝を貸したのははじめてだ」
「…本当にすみません」
「いいさ。俺もこのまま寝ていたしな」
「そうですか…」
「気が晴れないか?」
「はい、まあ…」
そうだな、と呟いて欠伸を一つ。このまま寝ていた、というのは本当だろうか。確認してみようと思い清正さんを見ると、膝に確かな重みが加わる。
「宗茂さん…!?」
「酒が抜けきっていないのかまだ眠くてな。他人の膝は安眠出来るようだし、借りるぞ」
「あのっ」
「気が晴れないんだろう?」
「そ、それは、まあ」
「俺が起きるまで清正と話していればいいさ」
「………はい」
膝に感じる重み。紛れもなく宗茂さんのものであるそれ。あ、目閉じちゃったよ、宗茂さん。
「どうしましょう、清正さん」
「…さあな。お前のしたいようにすればいいんじゃないか?」
したいように。
これ夢じゃ、ないよね。
20110726