21

不味い、寝不足だ。
あの後、残りのお酒を飲み終えた宗茂さんは、宣言通り風景を眺めることに専念してしまい特に会話はなかった。戻るかと吐き出すと足の怪我を思い出したのかまた抱えられそうになり、私を送ってくれたのかと思えば当たり前のように宗茂さんまで座り込んで。動揺しすぎて慌てながら尋ねると「俺の部屋だが?」と不思議そうな顔で返されてしまった。私はまたてっきり、侍女の部屋かと。というかギン千代さんは、何故いなかったのだろうか。


(……仲悪いのかな)


でも、今は二人並んで話してるし。眉間に皺が寄ってはいるけど、ギン千代さんは宗茂さんを嫌っているわけではなさそうだ、と思う。見る限り。


「結局お前も来るわけか」
「…清正さん」


柳川に戻るという宗茂さんに従い、私は船で九州に向かっている。清正さんは大阪に残るものだと思っていたら、どうやら熊本に行くらしい。知らなかった。


「宗茂のお守りでもする気か?骨が折れるぞ」
「いや、私がお守りをされているというか…柳川行きを望んだのも私ですし」
「…理解出来ん。まあ、確かにあいつといる方がお前にしたら安心かも知れんが」


ギン千代さんと同じように眉を寄せる清正さんも、別に宗茂さんを嫌っているわけではないんだろう。熊本に戻る前に柳川で一泊していけ、という宗茂さんの誘いを受けたんだし。


「あの、清正さん」
「何だ?」
「あの二人は、仲が悪いんですか?」


喧嘩でもしているんだろうか。それにしては宗茂さんは楽しそう、何時もああだとも言えるかもしれないけど。


「さあな。あいつらの事情はよくわからん」
「はあ」
「最悪だ、ってことはないだろう。飛び抜けて仲がいいってわけでもないだろうが」
「…夫婦、ですよね?」
「夫婦だからといって皆が皆上手くいくわけじゃない。互いの益も絡んでいるわけだし―…まあ、信頼はしあってるようだが」
「…そうなんですか」


恋愛で結婚できる時代じゃないのか。全部が全部ではないだろうけど、家がどうとか、女は政治の道具の色合いが強い時代なんだよね。ギン千代さんもそのうちの一人、ということだろうか。


「あ、あと」
「ん?」
「今更ですけど、清正さんって、失礼ではないですか?」
「は?」


流れでそう呼んではいるけど許可を取っていない。宗茂さんは本人がそう呼べって言ったけど、清正さんは違う。


「加藤さんの方が…」
「いや、別に。清正さんで構わん、俺は」
「…あ、そうですか。なら、清正さんで」
「ああ」


もしかして照れているのか、清正さん。照れ屋なのかな。石田さんと同じで、不器用なんだろうか。


「…何だ」
「いいえ!」


ちょっと可愛い人かもしれない、清正さんって。



20110714

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -