それにしてもイケメン率の高い夢だ。具体的且つ長すぎるし感覚がリアルだけど夢だ。悪あがきでも、まだ夢だと思っていたい。
豊臣秀吉、加藤清正ときて、石田三成。正直、豊臣秀吉以外は聞いたことあるかな程度だけど(石田三成って確か、関ヶ原で負けた人だよね)。立花宗茂と島左近、だっけ。これは聞いたことがない。そういえば宗茂さんと清正さんが言っていた「まさのり」って誰だろう。
「…あの、」
「何だ?」
清正さん以上に怖い、石田さん。宗茂さんは微笑んでる。あまりの迫力につい視線を送ってしまったけど結果オーライ、いやなんか、楽しんでるように見えないこともないような。
まさかそんな、明らかに怪しい私にも優しく接してくれた宗茂さんに限って。確かに清正さんとの初対面で怯える私を見て楽しんでいたような気がするし、清正さんも「お前じゃないんだから虐めない」みたいなことを言っていたような。まさかまさか。だってこんなに素敵な人だよ。
「まさのりって、誰ですか?」
「正則?」
石田さんは聞きたくなかったというような顔だ。嫌い、なのかな。謝ろうにも顔が恐すぎて言葉に詰まってしまう。
「落ち着いて、殿。あーなまえさん、でしたっけ?殿、今ちょっと不機嫌で。悪く思わないでやってください」
「は、はい…」
「どうも。と、正則さんね。秀吉様子飼いの将だが…それが何か?」
「いえ、あの」
島さん。流石、見た目が大人なだけに対応も大人。石田さんは島さんが部下であることに感謝しないと。
「まさのりみたいだって言われたので」
「なまえさんが、ですか?」
「はい」
「…そこまで致命的な馬鹿には見えんが」
「え?馬鹿?」
その「まさのり」という人は馬鹿なのか。宗茂さんと清正さんを見ると、清正さんは居心地悪そうに目を逸らす。宗茂さんは相変わらず爽やかな笑顔。やっぱり宗茂さん、思いたくないけど難がある、のかもしれない。
「俺は別に馬鹿だと言いたいわけじゃなく、」
「そうか?俺は、物を知らない女だと思ったが」
「宗茂さん…?」
「あまりにも常識が欠けているだろう」
「お前が言うか、それ」
考えてみれば、知能が飛んだかとも言われたような。
あれだ。宗茂さん以外の態度と比較してしまうから、私を守ってくれた素敵な王子様、な印象を抱いたに違いない。素敵なのは事実だけど。
「ん?気を悪くしたなら謝るが」
「いえ別に…気を悪くとか、そんなことは」
「それはよかった」
まあ、この世界の常識を心得ていないから馬鹿と思われても仕方ないか。実際そんなに頭も良くないし、並ではあるけど。
「何だろうな。なまえはからかいたくなるというか、色々と教えてやりたくなるというか。そんな感じだ」
「はあ…」
「素直だから好感が持てる」
「えっ!?」
「誰にでも言ってるぞ、それ」
糠喜びでもいいから放置してくれたらよかったのに。でも苦々しい顔ってことは、清正さんも言われたことがあるのかな。宗茂さんって、何なんだ。
「……」
「好きなものを好きと言うのは変か?」
「変、では。…私は言えませんけど」
「拗ねたな」
何で今、ちょっと柔らかい表情になったの。
20110610