06

「郭嘉は明日仕事?」
「そうだね。どうしようか、大人しくしている?」
「うーん…」


ただ舐めただけのような。「苦っ!」という小さな声と共にカップが戻される。コーヒーを飲みたいと言ったのはなまえ殿だけれど、深々と刻み込まれた皺を見るに後悔しているね、これは。


「シロップも砂糖も入れないの?」
「うん」
「苦い」
「ココアあるでしょ。ほら」
「うん」
「それで?」
「うーん…」


そういえば学校は。今は長期休暇とか、そんなところだろうか。学校に通わなくなって久しいし、そもそもあまり真面目に行っていた記憶もないからよくわからない。


「………」
「見るだけじゃわからないよ」
「…私も行っていい?」
「会社に?」
「会社に」

真剣な目して食い入るように私を見詰めるなまえ殿。まあ曹操殿のご息女だと説明すれば、誰も咎めはしないだろうしね。部屋に一人残して色々と漁られるよりはいいか(漁られて困るようなものはないけれど)。受付けの蔡文姫殿や警備の許チョ殿、典韋殿辺りに任せてしまえば私も楽だし。

「…いいけど、どこにいるの?」
「…えっと」
「曹丕殿に聞いてみようか」


おや、顔が歪んだ。



20121116

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