それが恋でもかまわない

※男主

肩に掛かる重みを感じて心臓が逸るのは動揺なのだろうか。それが恐怖なのか恋情なのか、判断はつかないが。


「…あの、王異殿。平気ですか?」
「ええ。なまえ殿がこうして肩を貸してくれるから、楽だわ」
「それは、よかった」


王異が甘えるように擦り寄る姿は珍しい、となまえは思う。そこまで飲んでいた印象もなければ彼女が酒に呑まれるとも考えにくい。投げ出された手に重なる王異の掌の温度もそう変わりはないため、意識が混濁しているということもないだろう。

そうだとして。
自惚れだと思われるのかもしれないが、王異は慣れもしない人間に触れるような人ではない、となまえ思っている。慣れた相手に当たり前のようにするのかと問われたらばその限りでもなく、司馬懿とも一定の距離はあるようだし。特別だと、暗にそう告げているのではないか、王異は。


「…なまえ殿の手、好きだわ」
「え、…はあ…」
「何かしら。綺麗なわけではないけど、触れた感覚だとか、死地を潜り抜けたのだとわかる傷も、好き」
「あ、ありがとう、ございます」
「何故お礼を言うの?」
「いやっ、」
「不思議な人ね」


上目でなまえを見る王異の唇は弧を描く。好きとはまず間違いなく好意、引っ掛かっているのは、その度合いだ。

王異は相当に変わった女性である。この陣営に加わるまでの経緯も性格形成の一端であるに違いないが、元来から片鱗もあったのかもしれない。そんなこと、なまえには一生わからないのだが。


「王異殿は」
「何?」


真っ直ぐすぎる瞳は熱を孕んでいるようにも、見える。


「私のことが、好きなのでしょうか?」
「…………」
「あー…、えっと。忘れてください、色々」
「……それも、いいかもしれない」
「え?」


なまえの知る限りの王異では、どれが真実なのかは見抜けないが。

少なくとも、冗談で撓垂れるような人ではないと思う。あくまで、なまえの思う、王異は。



end.

20120103

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