あいつはお姫さまを手に入れたらしい

「…うむ、美しいな。申し分あるまい」
「孟徳、それは本心?」
「本心よ。馬子にも衣装、曹仁も喜ぼうて」
「だったらまあ、許してあげる」


私がどの言葉に釣られたのかを見抜いている孟徳は、愉快そうに口許を緩めると新たな装飾品を手に取る。私に向かって掲げては「女とは恐ろしい生き物だな」と零すのだから、大概失礼だ。私も別に、孟徳に称賛されたいわけではないけれど。


「…貴方が協力を申し出るなんて、意外」
「そうか?愛する者同士が心を通わせたとなれば、大人しくしてもいられん」
「子孝も口にはしないけど、絶対思ってる」
「曹仁だが、もう間もなくここに来るぞ」
「え?」


驚きを見せる私に孟徳はまた笑った。部屋まで続く廊下を、子孝が歩いている。孟徳は何と言って子孝を呼び出したのだろうか。

子孝と契りを交わすことを孟徳に黙っていたわけではないし、永遠に黙っていようと思ってもいなかった。そもそも孟徳は、子孝と私が男女の仲であることを知っていたわけだし。

妙才も元譲も、孟徳を選ばなかったことは正解だと笑った。孟徳も同じように顔を綻ばせて「違いない」なんて言っていたし、そんなものなのだ彼らは。揃いも揃って「今の曹仁ならば問題はない」と口にする。


「殿」
「あ」
「噂をすれば来よった。何、今更恥じる必要もあるまい?一糸纏わぬ姿はよくよく焼き付けていよう」
「……孟徳」
「ふっ」


相変わらず腹の立つ。
その発言に初な反応を見せるほど幼くはないけれど、孟徳は悪趣味だ。女は、この少し意地の悪いところに熱を上げるものなのだろうか。


「…なまえ?何故ここに、それにその格好は」
「近々、婚儀を挙げるのであろう?曹仁、おぬしはどう思う」
「は。…よいと」
「……子孝、本当に?」
「自分はそう思うが。なまえは気に入らぬか?」


様子を窺うように向けられた瞳。違うの、ただ似合うと言われたことが嬉しくて。孟徳が笑っているのは、苛々するけれど。


「いいえ。…笑ってる」
「着飾っているからか、姫君のようでな」
「子孝、貴方も失礼よ」
「似合っている。自分はただ、照れ臭いのだ」


そう言われたら、怒る気も失せるじゃない。



end.

20111220

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