曹操殿の邸宅に行ったことはあっても部屋を覗いたことはない。そういえば、訪ねたのは一度だけではないのになまえ殿に会ったことはないな。
まあ取り敢えず、シングルベッドなんてこんなものだろうと思うのだけど、なまえ殿は不思議そうにぱちぱちと瞬きを繰り返している。もっと広々としたベッドを使っているとか。このシングルベッドにしても、私に合わせたものだからなまえ殿には大きいのだが。
「暫くはここで寝てね」
「郭嘉は?」
「私はリビングに布団を敷くから気にしないの」
「ここじゃないの?」
「ないの。ほら、さっさと寝る」
「…………はあい」
のろのろとベッドに潜ったなまえ殿が真っ直ぐ私を見る。見詰めている、とも言えるそれが訴えたいことはわかるよ。絶対に一緒になんか寝ないからね(甄義姉様なら別だ)。
「お休み、なまえ殿」
「お休みなさい、郭嘉」
「流石に眠っている間に捨てに行くなんてしないから、安心して寝なさい?」
「そ、そんなこと思ってない!」
「そう?」
眠る前に少し仕事を進めておこう。本当なら明日に取り掛かるつもりだったのだけれど、なまえ殿に何を要求されるかわかったものではないしね。
「か、郭嘉」
「うん?」
「あのね、」
「一人で眠れるよね」
「…………はあい」
私は甄義姉様ではないからね、なまえ殿。
20121116