03

「298円…」
「何?子供用のセットがよかった?」
「子供じゃないもん!」
「はいはい。だったら文句言わないの、お腹空いたって騒いだのはあなただよ」
「…騒いでない…」


ただの八つ当たりに過ぎないけれど、司馬懿殿に嫌味を幾つか投げながら荷物を受け取った、まではいい。

問題はその後。「お腹が空いた、何か食べたい」というなまえ殿のしつこい宣言により、わざわざスーパーまで買い物に出る羽目になったのだ。

その間も手作りがいいだの元譲叔父さんはどうだの甄義姉様はああだのメイドはこうだのと小煩いことこの上なかったなまえ殿は、割り箸で弁当を突きながら不機嫌顔である。あのねえ、私だって不機嫌だよ。普段は面倒で歩いて5分のコンビニで済ますところを、車を使ってスーパーまで行ったのだから。今も、お気に入りを詰め込んだであろう複数のボストンバッグをどこに置くか悩んでいるのだし。


「郭嘉はいつもこうなの?」
「だって面倒じゃない」
「作れないの?」
「さあ。やろうと思えば出来るんじゃないの?」
「しないの?」
「面倒なの。私のことはどうでもいいから、さっさと食べなさい」
「…はーい」
「……何?」
「なんでもない」


どうにもなまえ殿は手作りという点に拘りがあるらしい。例えその欲求を満たしたところで、なまえ殿が普段から口にしているものには到底及ばないと思うのだけれど。ちらちらと私を窺うのは観察なのか、言いたいことがあるからなのか。


「夜ご飯もお弁当?」
「そのつもり…嫌ならファミレスにでも行く?」
「…郭嘉の手作り」
「作らない。ファミレスね」
「意地悪」
「こんなの意地悪のうちに入りませーん」
「郭嘉嫌い」
「私もきらーい」
「むうっ…!」


曹操殿も幼い頃はこんな風、だったのかなあ(そう思えば微笑ましく見え…ないよ)。



20121116

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