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なまえ殿が真っ直ぐにこちらを見ているのだとバックミラー越しに確認出来る。何か言いたげな瞳。余裕を持って出てはいても、そうのんびりしている暇はないのだけれど。


「時には感情を潜めるのも、素敵な女性になるために必要なことだと思うよ」
「なっ、何も思ってないよ!」
「思い切り動揺が言葉に乗っているけど」
「………」
「隠し事は苦手だって学ぶんだね」


抱えていたランドセルを背負い、いよいよ降りる決心が付いたらしい。それでも未だに私に向けられる視線、物言いたげに唇が動く。


「郭嘉」
「ん?」
「いってきます」
「いってらっしゃい」
「…郭嘉」
「何?」
「ちゃんと父様連れてきてね」
「勿論。忘れるはずないじゃない」

沈黙。そうしている間にもどんどん子供が校門をくぐっていく。あ、あの先生は美しいな。豊かな黒髪に柔らかな微笑み。うん、堪らないね。

「……郭嘉」
「はいはい」
「忘れないでね」
「…はいはい。私の記憶力はそこまで悪くないからね」
「…!いってきますっ!」
「いってらっしゃい」


ああもう、また曹操殿が面白がりそうだ。



20130717

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