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「私怒ってるの!」
「へえ」
「…怒ってる!」
「うん、だから?」


ソファーを陣取ったなまえ殿は抱き締めているクッションを、それこそ締め上げるように力を入れる。なまえ殿の私物なら好きにすればいいけど、それ私のだからね。まあ、止めなさいと声を掛ければ素直に従うのは面白いかな。それで怒ってるだなんて主張されてもさ。


「司馬昭は謝った」
「だから私も?はい、ごめんなさい」
「…誠意がない」
「わあ、まさかあなたに誠意を求められるなんて」
「………」
「クッション投げるならコップ倒さないようにね」


触れていた手がするすると離れ、取り敢えずは膝を抱えることにしたらしい。

司馬昭殿も憐れなものだ。なまえ殿に捕まったのがそもそも不運だったのかな。しつこいしね、この子。


「と、言うか。私が謝る理由って何?」
「人の気持ちをわかってないから」
「それならなまえ殿も私に謝らないと。人の気持ちをわかってないから」
「郭嘉だもん!」
「どうかなあ」
「郭嘉!」
「ならさ、なまえ殿。あなたの言う誠意って?」
「あのねっ!」


食いついたよ。何この待ってましたと言わんばかりの反応。聞いて聞いてと全身で訴える姿に、早くも疲弊してしまう。


「私、鍵が欲しい!」
「曹操殿にもらいなさい」
「違う!ここの!」
「いーやーだー。私が嫌だね。意味がわからない、どうしてあなたに合い鍵を渡す必要があるの?」
「郭嘉が私の面倒見てるから!」
「だったら叔父様でもその息子でも司馬の誰かのでもいいじゃない」
「頼まれてるの郭嘉!」
「それと合い鍵は同列ではないよ」
「同じだもん!」
「いや残念だ。私となまえ殿の見解は一致しないらしい」


言い負かそうにも言葉が出ないらしく魚みたいに動く口、「不法侵入だよ」と加えてみれば、また頬が膨らんだ。



20130703

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